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2008年07月21日

2008年7月20日 ガラパゴス化現象を避けたい

環境×経済×文化 山本紀久雄
2008年7月20日 ガラパゴス化現象を避けたい

ガラパゴス化現象

南米エクアドルの900キロ太平洋上の沖合に、ガラパゴス諸島があります。ここはダーウィンが進化論のアイディアを持った場所として有名ですが、諸島内には独自に進化をとげた固有の生物が生息しています。大陸から隔絶された環境下であるため、他の環境の影響を受けなかったためです。この事例が日本に例えられることがあります。

一億人超の人口を持っているがゆえに、日本固有の商慣行や独自の技術や機能サービスにこだわって、世界とは異なる市場になっている業界を指すのです。具体的には日本の携帯電話です。世界最高水準の技術を活かして、海外企業では真似できない機能を盛り込んでいますが、世界市場ではほとんどシェアが取れません。独自の進化をとげている間に、世界では機能要求水準の低いレベルで、事実上の使用標準が決まり、その標準下で拡大成長し、日本は取り残されたのです。

競泳水着の敗北

 ミズノの社長が、英スピード社と競泳水着の着用競争で敗北した結果について、以下のように語っています。(日経新聞2008年7月6日)

 「ミズノが開発した水着は選手の要望を完全に満たしていたと思う」「過去のスピード社の水着開発は我々も一緒にやってきたという自負がある。ところが実際は海外選手から直接、要望を聞いたことはなく、体形データすら取っていなかった」と。
 
この発言からいえることは、ミズノはスピード社と提携していたことと、選手の要望を完全に満たしていたのに負けた、という奇妙な思考力を持っていることです。

負けたのは、要望を完全に満たしていなかったことと、日本人選手だけに対象を絞って水着開発をしていたからで、ガラパゴス化現象ともいえるのではないでしょうか

脳の構造

 養老孟司氏が次のように述べています。

「10年前の自分の脳にあった記憶と、今の自分の脳に入っている記憶とは、果たして同じだろうか。体をつくっている物質はほとんど入れ替わっている。同じ事柄について同じ記憶を保っていると、本人が確信しているだけで、脳全体が変わってしまえば、違いがあっても気づかないはずだ。別の言い方をすれば、その時々のその人の脳にとって整合性があるように、つまり覚えやすいように記憶を変形させている」と。

 これは怖い発言です。つまり、過去のストーリー性のある記憶はアテにならないということなのです。自分にとって覚えやすいように、説得力あるように、勝手に脚色し編集してしまうのが脳だ、といっているのです。脳は過去を思い込みにするのです。

篤姫

しかし、この脳の思い込みは、過去の歴史を現代に蘇えさせ、多くの人に共感を得るという作業に活用できます。つまり、ある優れた人物によって、歴史を脚色し編集するという意味ですが、その優れた脳力基準とは、今という時代への感覚度合いです。鋭い時代感覚があれば、歴史を今に蘇えさせられます。
その成功事例がNHK大河ドラマ「篤姫」と思います。

天璋院篤姫は第13代将軍家定の御台として、家定死後は第14代将軍家茂に嫁いできた、孝明天皇の妹・和宮(静寛院宮)とともに、徳川家を守ろうと江戸無血開城を成功させるストーリーですが、これまでの展開では、本土最南端の薩摩の地で、桜島の噴煙を見ながら、錦江湾で遊ぶ純朴で利発な一少女が、将軍家の正室となり、3000人もの大奥を束ねるという、ただならぬ人生の歩み、それを史実とドラマフィクションとで上手に描き、それが多くの視聴者に受け入れられています。

このように、過去の歴史を今の時代に共感させるためには、現代人からの認識、理解、共鳴、同感が条件ですが、この点で「篤姫」は成功しているのです。

大奥が中国で大ヒット 

中国でもこれまで韓国ドラマが、高い人気を誇っていました。いわゆる韓流ブームで、日本と同じでした。だが、このところ日本と同様、中国でも韓流ブームは凋落傾向で、 韓国ドラマの不振にとって代わったのが、しばらく鳴りを潜めていた日本のドラマです。

中国の日本ドラマの輸入は前年比30%以上も増えていて、その象徴が今年4月に放送された「大奥」です。放送開始直後から人気を呼び、4月7日の夜には中国全土で2000万人もの人々が、この時代劇ドラマを見たのです。
 
関係者によると、マンネリ化傾向の韓国ドラマに対し、題材が幅広く、俳優陣も多様、ストーリーのテンポが速い点、それが日本ドラマが評価されている理由とのことです。

 このように大奥が受け入れられたということは、徳川将軍の江戸城という特殊性を、時代感覚で脚色し編集し直すと、中国人にもわかるという事実、つまり、物事を世界標準にしていけば、異なる国、過去に問題を抱えている国でも、受け入れられていくという意味につながります。

 また、中国人もこういうドラマを通じて、日本に対するかつてから持っている認識を、変えていく可能性もあります。

中国人女性の実態

その中国、オリンピック開催が間近に迫っていますが、大地震に襲われた四川地域の復興課題や、いまだ尾を引いているチベット問題、加えて、猛烈なインフレと頻発する各地の暴動、さらに多くの労働争議による「世界の工場」の揺らぎなど、様々な問題が山積しているとマスコミ報道が伝えて、これは事実と思います。

では、これらの状況下で生活している一般の人々は、どのような実態なのでしょうか。マスコミが伝える諸問題のように、個人も動揺して生活しているのでしょうか。

例えば、大奥をみた人たちの多くは、二億人ともいわれている中間所得層であって、テレビの前に座った視聴者は女性が多いと考えられますが、その人々の生活はどういう状況なのでしょうか。今年3月と6月に訪問し、北京と上海でお会いした数人の実態、それを今号と次号に分けてご案内したいと思います。

(専業主婦を楽しむ)

最初はAさん26歳。北京の18建マンション三階に住み、結婚して二年で、子どもはいないし、仕事もしていません。夫は37歳で国営企業の管理職。

Aさんは子ども時代に両親が亡くなり、国からの援助金で学校を出るなどして、苦労して育ちましたが、成績が優秀だったのでマンション販売会社の営業に就職できました。

ある日、一人の男が販売事務所にやってきました。営業担当のAさんが早速対応したわけですが、そこで彼はAさんに一目惚れし、Aさんが推奨するマンションを買うことになりました。その男が今の夫で、その買ったマンションに二人が住んでいるのです。

夫が買ったときは一㎡6000元(1元=16円換算で9.6万円)でしたが、今は15000元(24万円)と倍以上となっています。広さは2LDKの南向きで、ベッドルーム二部屋と広いリビング。テレビは大型壁掛け式で、ベッドルームにも薄型テレビがあります。

趣味は欧米式の刺繍。スポーツはクラブに行ってバドミントンを楽しみ、旅行が大好きで、タイ、マレーシア、シンガポール、サイパンに行きました。日本にはまだ行っていないが、興味あるところは原宿、秋葉原、富士山、箱根、北海道、銀座とすらすらと日本の地名が出てきます。イメージを聞くと銀座は買い物天国、箱根は温泉と答えます。

歌舞伎に興味あったので、以前に日本語学校へ通ったことがあるので、日本語が少し分かります。壁を見ると結婚式の写真が掛かっていて、夫が色白で少し歌舞伎役者に似ているので、それを伝えると笑い、今来るからとまた笑います。

実際に現れた夫は写真と反対の色黒で、タバコ吸うので歯が脂で真っ黒。夫は会社の慰安旅行で毎年海外旅行に行くといい、日本、サイパン、タイ、マレーシア、シンガポールに行って、今年はスイスに行く予定だといいます。さらに、中国人は頭がよく、経済成長はこれからも続くと明確に発言します。

なるほど、これがよく言われる「PRIDE of CHINA(中国の自負心)」かと、感じた次第です。次号も中国人女性の生活実態事例を続けてご案内します。以上

投稿者 Master : 2008年07月21日 05:19

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