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2008年05月20日

2008年5月20日 二つの二億人

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年5月20日 二つの二億人

景気は足踏み状態

今回は少し経済状況について考えてみたいと思います。日本の当面景気は、次の三つが重なって「雨傘用意」という状態ではないでしょうか。
1.米国サブプライム問題
これは、毎日のように新聞を賑わして、すでに一年近くになろうとしていますが、まだ解決の方向性は見いだしていません。発生要因は単純なのに、要因を切り刻んで複雑にする「金融高度テクニックによる証券化」によって、要因をミートホープ化にしてしまった。

つまり、北海道・苫小牧市のミートホープ社が行ったこと。それは、牛肉の挽肉の中に豚肉を混ぜたり、色の悪い肉に血液や漂白剤を混ぜて色を変えたりしたことで、本来の牛肉がどれであるのかが分からなくなりました。これとサブプライム問題は同じと思います。

2.一次産品価格の高騰

原油のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格が130ドルを目指そうという勢いです。産油国はドル安で輸出代金の減少を補おうとする見込みもあるのでしょうが、とにかく騰がりすぎです。小麦も騰がって、食料品価格に値上げが続いて、インフレ懸念が景気に影響してくると思います。

3.建築着工の大幅減少

昨年6月の改正建築基準法の施行以降、住宅着工戸数が大幅に減少し、建設財出荷が低水準となっています。6月以降は前年対比で向上すると思いますが、これは昨年大幅に落ち込んだ「揺り戻し」ですから、必ずしも楽観視できないと思います。

世界の経済の流れは変わった

世界経済は、2005年から2007年の間、米国及び先進国の景気が緩やかに減速するなかで、BRICsなど新興国の個人消費や固定資本投資などの内需によって成長しました。結果は、世界のGDPに占めるシェア、2007年で先進国は47%、BRICsなど新興国は53%と逆転しました。2000年では先進国は55%、新興国は45%でした。米国のシェアも2000年が21%台、2007年は18%台に下がっています。
明らかに世界経済の流れは変わっています。米国一辺倒の政策は時流ではありません。

トヨタ自動車の決算

そのことの証明がトヨタ自動車の決算です。2008年3月期はゼネラル・モーター社を超えて世界一の売上高、利益も過去最高を更新しましたが、2008年1月から3月までの四半期決算内容を見ると、これまでドル箱だった北米市場で営業損益が124億円の赤字に陥りました。原油高と個人消費の冷え込みが影響し、高い車が売れなくなって、利益率が低い小型車にシフトしたことが大きいようです。

今後の懸念

今後、懸念される材料は二つの二億人です。

1.中国の二億人

まず、最初は中国です。ご存知の通り、中国は高成長を続けています。それは人口13億人ともいわれる中で、中間所得層の人が育って、その人数が二億人いると推定され、これらの人々の消費行動が変わって、内需が向上、それを目指して世界中から企業が進出し、世界経済に大きな影響を与えています。

しかし、このところの中国は少しツキが欠けてきた感がします。胡錦濤主席の日本訪問は無難に終わりましたが、北京オリンピックを目前として、次々と問題が発生しています。

今年1月の冷凍ギョーザ中毒事件、まだ解明されていません。3月のチベット騒乱、国際社会に懸念が広がりました。株価も下落しました。昨年10月に6092ポイントの最高価格をつけた上海総合指数は、今年4月に3000ポイントを割り込みました。インフレも2月は前年同月比で8.7%、3月は8.3%、4月は8.5%と高く続いています。

そこに四川大地震が発生し、被害は甚大です。世界各国から支援を受け入れ、大変な状況ですが、時間経過と共に被災地も復活してくると思います。

だが、このような経済的マイナス状況によって、中間所得層二億人の内需に影響が出始めますと、世界経済に大きな打撃を与えることになります。

2.米国の二億人

①超格差社会

米国の二億人の説明に入る前に、米国の格差社会の実態を整理しないと問題点が見えてきません。米国は大きく四つの階層に分かれています。(アメリカの真実 小林由美著)

一つは資産1200億円以上の超金持ち400世帯と、120億円以上金持ち5000世帯、これらが「特権階級」を構成しています。次は「富裕層」で、資産12億円以上の
35万世帯と、年収2000万円以上の460万世帯で構成しています。

最下層は年間所得230万円未満で、スラムに住む人、黒人、ヒスパニック、インディアン保留区に住む人たちですが、この層が全体人口の25%から30%いると推定されています。この3層で全体の35%占めます。

残りは65%で、米国全体人口三億人の65%は約二億人となり、この層が実はサブプイムローンの対象層人口なのです。

②「特権階級」「富裕層」と「最下層」は影響なし

先日、シリコンバレー、デトロイト、ニューヨークの不動産事情を視察してきました。
結果は、金持ちが住む地域と、活発な経済活動の地域は、サブプライム問題の影響はないということが分かりました。勿論、最下層地区も影響はありません。

まず、シリコンバレーのスタンフォード大学がある高級住宅地パロアルト、ここは値下がりしていません。高級住宅地域で1億円以上の家はサブプライムに関係なく、ここから車で30分離れたサンノゼ地区は、銀行ローンよりも家の価格が下がった物件を売り出す、ショートセールが活発に行われていました。
次に向った自動車の街デトロイトは大問題でした。街には人通りは少なく、サブプライム問題によって全体で25%下がり、当分上がる見込みはないという実態でした。

一方、ドル安で世界中からの観光客で溢れているニューヨークは、2008年3月現在で前年比18%不動産が上がり、現在でも新規コンドミニアム建設が80件も行われていて、完成前にドンドン契約が成立し、中には完成前に値上がりするので転売して利益を上げている実態でした。

つまり、個人も地域も超格差社会の米国を、全体で論じても実態がわかりません。サブプライム問題対象人口層を明らかにし、その上で分析する必要があるのです。

③米国人の収入源

サブプイムローンに関係する米国人の収入、それは基本的に二つあります。ひとつは当たり前ですが給料です。もうひとつは資産価格の向上をキャッシュに換えることでの収入です。例えば、自宅の時価が騰がると、銀行に担保価値を上げてもらって、増えた分を借り入れることで収入を増やし、その分を消費に回すのです。これが不動産価格の下落によって減りはじめ、ローン返済が出来ない人々が増えだして消費に影響を与え始めました。

④銀行が大打撃を受けた

住宅ブームによる貸出条件緩和で、一段と増やしたサブプライムローン。これが価格下落と、ローンや金利延滞の急増で、銀行は巨額の評価損を計上し、自己資本不足となりました。世界全体のサブプライム関連損失は、IMF試算で9450億ドル(約100兆円)と発表されました。金融機関の損失で金融が収縮すれば、経済も当然縮むことになります。

3.二つの二億人の影響

今月19日、国連が2008年の世界経済成長率予測を発表しました。1月時点では3.4%だったものが、5月時点では1.7%と、半分の成長率に減速させ、また、米国は昨年2.2%の成長に対し、マイナス0.2%になるという大幅ダウン予測です。

米国の二億人が、サブプライム問題やガソリン高などの理由で、消費を減らし出し、経済に影響が出始めていることを認めているのです。

これに加えて、中国の二億人中間層が、中国国内のマイナス要因で、消費支出を抑え始めれば、これまた世界にすごく大きな影響を与えることになります。

改めてよく考えて見れば、米国と中国という二つの二億人が、ここ数年の世界経済成長主役要因であり、当然に日本経済もこの二億人に影響されていました。

世界から日本を見るということが、重要になっていることを痛感いたします。以上。

投稿者 Master : 2008年05月20日 12:40

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