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2008年04月05日

2008年4月5日 ミシュランガイド東京版騒動が示す先

環境×文化×経済 山本紀久雄
2008年4月5日 ミシュランガイド東京版騒動が示す先

ケータイとタバコ

上海から北京まで中国東方航空で移動しました。出発の上海・虹橋空港手荷物検査は厳重でした。今まで受けた中でロンドンに次ぐ厳しさと思います。靴を脱ぎ、ベルトを外し、ジーパンの中に手を入れてきます。ですから、当然に時間がかかります。国内移動だと軽く考えて空港に行くと、出発時間に間に合わないくらいの時間がかかるのです。多分、オリンピック前という時期的なことが影響していると思います。

搭乗した機内のサービスも意外でした。なかなかのサービス状況です。客室乗務員の対応もよく、これもオリンピック対策かとも感じました。

しかし、北京首都国際空港に着き、ゲートに向かうタイミングになって驚きました。乗客の多くが携帯電話を取り出し、大声で喋り始めます。ここが日本と大違いです。機体はまだ動き、ベルト着用サインが出ていて、客室乗務員も座っているのに携帯電話は花盛りです。中国は架設電話が全国に普及する前に携帯が広がった国だと、改めて認識しました。

タバコもすごい実態です。どこのレストランでも、すべてのテーブルの上に灰皿があります。見ていると中国人同士でタバコを一本ずつ交換し合って吸い、耳にタバコ一本載せている人がいます。世界の禁煙化とは関係ないとばかり、中国のタバコは花盛りです。

上海のスバゲテイ・ナポリタン

日本ではスバゲテイ・ナポリタンが定番メニューです。だが、イタリアに行って、ナポリタンとオーダーしても存在しません。

多分、日本のナポリタンは、イタリアのナポリ風料理で、ベースがトマトソースのハムや玉ネギなどが入っているもの、またはミートソースが上にかけてあるものと同じと思います。

このナポリタンが、上海のホテル内レストランのメニューにありましたのでオーダーしました。このホテルは日本の資本で上海でも名門です。しばらく待って期待のナポリタンが出てきましたが、見てビックリ、色が黒いのです。トマトベースのはずですから赤いだろうと思い込んでいましたが違うのです。
一口食べてさらにビックリ。不味いのです。その不味さも普通ではありません。世界中でナポリタンを食べていますが、ここの不味さが一番です。セメントを噛んでいるようなもので、食べるのをやめようかと思いましたが、空腹でもあったので、ようやく半分食べフォークを置くと、ウェイターが寄ってきて、問題ありましたかと日本語で聞きます。

「今まで食べた中で最も不味い」と答えると「もう一度作り直します」というので「もう食べられない」と伝えると「では、無料にします」と言います。ナポリタン以外のスープとグラスワイン分だけ支払いましたが、見事な不味さに感心しました。

北京のスバゲテイ・ナポリタン

北京の欧米系資本ホテルのレストランで、スバゲテイ・ナポリタンを食べました。当然、メニューにはありませんので、スバゲテイメニューのトマトソースをオーダーしました。

このレストランは調理場がオープン式で、働いている人たちが客席から見え、欧米人がシェフです。ここなら本格的な味のナポリタンが出てくるだろうと予測したとおり、しばらく待ってテーブルに運ばれてきたものは赤い色で、一口食べて「美味い」と思いました。さらに、北京で偶偶入った中国料理店も、調理場が客席から見えるスタイルで清潔でした。

これもオリンピックの影響かと思います。また、上海のナポリタンが不味かったのは、シェフの国籍の違いではないかと推測しますが、中国料理は抜群でした。昼夜何回も異なる中国各地の料理を食べましたが、すべて満足味でした。

ナポリタンだけが不味かったのです。地元の中国人に聞きますと、フランスやイタリア料理は、中国ではまだまだという見解です。本格的なレストランは少ないという意味です。

北京のようにオリンピック目指している都市は、店造りを工夫し、本場外国人シェフが導入され、急速にレストラン業界のレベルが上がったと思います。

ミシュラン騒動

昨年11月、「ミシュランガイド東京版2008」が発刊され、これが一大騒動を発生させたことは、記憶に新しいと思います。星付けを発表した週は、テレビを中心にワイドショーだけでなく、ニュース番組までミシュラン一色でした。

そもそも「ミシュランガイド」とは、1900年にフランスのタイヤメーカーであるミシュラン社が、当時数千人しかいなかったドライバーへ、タイヤ修理工場や給油所の地図を無償で給付したのが始まりだと言われているように、ホテルやレストラン情報はおまけのようなものでしたが、厳しい評価と覆面調査という信頼性が権威化してきました。

星の数結果でシェフの首が飛び、オーナーが自殺したとの噂もでるほどになって、さらに、権威付けに拍車をかけてきて、とうとう日本に乗り込んできたのです。

ところがこの星の数、パリは64店、ロンドン43店、NY39店となっていますが、何と東京は150店もあるのです。パリの2.3倍、ロンドンの3.5倍、NYにいたっては3.8倍ですから、いかに東京の「ミシュランガイド」店数が多いかがわかります。

それほど東京の外食状況のレベルは高いのか。という素直な疑問が浮かびます。東京には16万軒の飲食店があるといわれているように、確かに外食産業は盛んで、美味しい店も多く、それらが世界の日本食ブームに一役も二役も貢献していることは事実です。

しかし、世界の一流都市と比較し、星数が何倍も多いという格付けには、次のミシュラン戦略があると考えた方がよいと思います。

三ツ星カンテサンス

ミシュランガイド東京150店のうち、最高峰の三ツ星は8店です。いずれも著名な店ばかりと思ったら間違います。資生堂のロオジエのように銀座を代表する本格派フランス料理ありますが、無名といってもよい店もあります。

その事例が「カンテサンス」です。勿論、レストラン業界では知られていた存在店なのでしょうが、2006年5月オープンですから、一般的な知名度は薄かったのがカンテサンスです。QUINTESSENCE 辞書にはエッセンス、真髄、典型とあります。

ここのシェフは岸田周三氏、33歳です。今やマスコミにも登場していますのでご存知の方も多いと思いますが、先日、このカンテサンスに行き、食べ、岸田シェフにも会いました。

カンテサンスの所在地は白金台、大通りからほんの少し入ったビルの一階。隣は空手道の組合らしき事務所があって、特別に目立つ店構えではありません。昼も夜もコース料理です。昼は一人7,350円ですが、サービス料10%と飲み物は別料金ですから、一人当たり一万円は超すことになります。

コースは七品、まず、最初は前菜三皿、最初はトマトのバジルゼリー載せ、次は山羊乳のババロアにマカデミアンナッツとユリの球根スライス載せに、南イタリアのオリーブとフランスのゲランド塩が添えられてきます。前菜三皿目はホタテの貝柱をスライスし、里芋とミルフィーユのように重ね、下地にタルト生地があり、そこにビートのソースと、付け合わせがウイキョウ。こうやって説明してまいりますと、カンテサンス料理教室になってしまいますので簡略化しまして、あとは魚と肉とデザートとコーヒーで七品となります。

食べ終わるまでに3時間、次の予定に間に合わないくらいの豊かなフランス料理の時間を過ごしまして、カンテサンスのドアを出たときは満足感とともに、日本の食事は世界的なレベルであると確認できました。なお、予約のための電話は猛烈渋滞ですからご注意です。

フランス料理を世界遺産へ

フランスのサルコジ大統領が、2月23日(土)のパリ農業祭で「フランス料理を世界遺産」へ登録申請するとの発言をしました。この背景には、フランス料理は世界一だとの自負と、料理は文化であるという認識からです。また、その食文化へ一環の中に「ミシュランガイド」が組み込まれており、その延長線上に今回の東京版があって、東京の食文化の高さをミシュランが証明したのであり、それがカンテサンスの体験で確認できました。

消費地・中国が世界経済の潮流

「ミシュランガイド」東京版の次はどこでしょうか。世界の経済認識が生産工場としての中国から、大リーグ開催にみるように「消費地・中国」へ変化させ始め、その中でも北京はオリンピック開催を迎え、ナポリタンに見られるように、食文化を急速に向上させています。

世界経済の潮流が、近々北京で「ミシュランガイド」騒動を発生させることでしょう。以上。

投稿者 Master : 2008年04月05日 09:25

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