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2008年03月20日

2008年3月20日 日本の評価

環境×経済×文化 山本紀久雄
2008年3月20日 日本の評価

このところ各国メディアから日本の政治混乱、経済停滞を懸念されることが多いので、改めて、日本人から見た評価と、外国人からみたもので比較してみたいと思います。

日本人から見た日本
まず、日本人から見た評価を、みずほフィナンシャルグループの新光証券が作成した「日本株式の評価は正しいのか」(2008年2月7日作成)という資料から見てみたいと思います。結論は「投資指標からみて、日本株式の評価は歴史的な低水準」と判断し、その根拠を各指標から分析しておりますのでご紹介します。


1.80年代半ば以降、主な大幅調整(下落)局面は7回あり、昨年7月高値からの今回の下落率は30%以上で、そろそろ大幅なリバウンド局面の起点に来ている。
2.PER(株価収益率=株価÷一株当たり利益)、これは一株当りの利益と株価を比較し、利益に対して株価が何倍まで評価されているかを見るもので、数値が低いほど割安となり、このPERの東証一部予想は一時14倍台まで低下し、80年以降、最も低い水準にあり、更に遡ってみると70年代前半以降となり、歴史的な低水準となっている。
3.リスクプレミアム(株式益利回り-長期国債利回り)は80年以降最大になって、株式が割安である。株式益利回りとはPERの逆数(一株当たり利益÷株価)で、株価に対してどのくらいの利益をあげているかを見るものである。したがって、相対的にリスクが高い株式益利回りが、相対的にリスクが小さい長期国債利回りを、どのくらい上回っているかを示す指標であって、この数値が高いほど株式が割安を意味する。
4.PBR(株価純資産倍率=株価÷一株当たり純資産)は85年以降最低の水準で、割安である。一株当たり純資産と株価を比較したもので、財務安全性から見るもので、数値が低いほど割安を意味する。
5.配当利回り(一株当たり年間配当金÷株価)は、85年以降最高の水準となっている。これは株価に対してどのくらい配当金が支払われるかを見たもので、高いほど株主に有利となる。
6.経済規模と比較した時価総額は米国、英国より小さい。GDPに対して、株式時価総額が何倍まで買われているかを見たもので、いわばマクロベースのPERといえ、日本は相対的に割安である。
7.この他に多くの指標を使って、米国、欧州、香港、中国、インドと比較し、日本の株価は割安という見解を述べている。
8.更に、日本の強みは「ものづくり」にありとして、代表的な企業の世界シェアを紹介している。
①トヨタ自動車 売上高54兆円 世界シェア31% 海外売上比率78%
②キャノン+村田製作所+東芝の三社合計売上高40.3兆円。情報通信機器分野の世界シェア54%。海外売上比率はキャノン79%、村田製作所75%、東芝53%
③信越化学工業 売上高9407億円 世界シェア74% 海外売上比率69%
つまり、新興国は目覚しい成長を遂げているが、日本の製造業は素材や部品、製造装置などにおいて優れた要素技術や効率的生産といった強みを持っており、今後も安定した成長が出来るので、高シェア・高技術を持つ日本企業を見直しすべきであるとの主張です。

外国人から見た日本
 モルガンスタンレー証券経済調査部長の、ロバート・A・フェルドマン氏が以下のような見解を述べているのでご紹介します。(猪瀬直樹・日本国の研究メールマガジン)
 まず、結論的に「2003年から2006年までは、『改革する日本』、『不良債権を克服する日本』だったが、最近は、『米国、欧州で深刻化してきたサブプライム問題は、日本の失われた十年とどこが似ていて、どこが似ていないか』になった。すなわち、日本は、回復ストーリーでもなく、不在でもなく、反面教師の文化財である。博物館に置かれている恐竜のようで、どういうものだったのか、なぜ絶滅したのか、との関心になっているという見解です。
 1.投資家が日本を見切売りをした理由
「外人投資家が売っているから日本株が下がっている」とよく聞くが、これは半分真実で半分嘘である。一見、外国人投資家の行動が日本株安をもたらしたように見えるが、80年代後半も外国投資が日本株をアンダー・ウェートにしていた。すなわち、日本株が一番上昇した時期は外人が買っていなかったのだ。「外人が売っているから株価が下がっている」論に反対証拠がある。当時は、外人が売っても邦人は買っていた。すると、今の株安は、外人が売っている理由も邦人が買っていない理由も考えないといけない。
 両者の行動は異なる理由ではなく、同じ理由である。一言でいうと、日本のマクロ改革もミクロ改革も逆戻りをしているからで、この傾向はすでに小泉政権後半の与謝野経済財政担当・金融担当大臣時代に遡るが、安倍政権になって加速し、福田政権になって更に加速した。
2.道路財源の議論が日本売りを加速させた
 道路財源問題も内外投資家に悪影響を与えた。小泉政権のとき、道路族のビジネス・モデルである道路汚職、無駄遣いを直す動きが始まった。20兆円の費用がかかる高速道路計画を見直して、10兆円に抑えて、道路公団の改革を行った。だが、道路財源問題は残った。道路関係税(主にガソリン税)の約5.5兆円はほとんど道路の建設や管理に利用するルールになっており、これは、汚職と無駄を支える道路族の永久「埋蔵金」である。一般財源化をすれば、道路族の政治ビジネス・モデルはすぐ消える。
 安倍政権が小泉政権を継いで、道路財源の一般財源化を唱えたが、指導力の弱い安倍政権に対して道路族が強く反発し、一年間延期になった。福田政権になって、福田総理は一般財源化に関して「慎重に検討する」(翻訳:「やらない」)に、当然、内外の投資家は失望した。
3.経済学、ビジネスを知らない裁判官の被害
 TOB(企業買収)に関する裁判所の判決も、内外投資家の日本に対する自信を落とした。会社法の改正によって、ようやく効率の悪い経営者に対する圧力が増すものと思った投資家は、判決をみて、保身経営は許されるとわかった。
加えて、株主たち自身が旧経営がいいという例もあったので、本来価値が潜在している日本の企業は、いつまでもその価値を実現できない状態が続くとわかった。これだけアジアに活気があるなか、わざわざ日本で頑張っても意味がない、という結論に達したというわけだ。
 日本の投資家も海外で資金を運用したほうがいいと思って、日本株に冷たい態度を示した。日本企業の役員会はビジネスではなく、カントリー・クラブであるという印象は免れ得ない。日本ブランドが悪くなった結果、ガバナンスがしっかりしている企業も当然評判が落ちた。
4.日銀総裁の選択劇
 日銀総裁の選択方法も投資家の反感を買った。すなわち、永田町と霞が関のインサイダーたちで自分の都合で決めて、どのような人が日本にとって適材適所かを考えない選択である。
 武藤さんは大蔵省時代、人事が上手で強力な役人であったが、マクロ経済の知識もなく金融業界で仕事をしたこともなく、投資家の間では金融政策の理解に関して評判は高くない。
国際交渉と迅速なコミュニケーションのために不可欠な英語力が弱いと国会議員も指摘している。なのに、任命する福田総理は旧来の選び方を優先した。投資家は、日銀総裁の選択が「財務省、日銀」の交代に戻って日銀を天下り先に過ぎないと当然皆が思うのは仕方ない。
 5.とどめを刺した北畑発言
 その中で、北畑発言はとどめを刺した。経産省の北畑隆生事務次官が、1月24日のスピーチで、デイトレーダーのことを「バカで浮気で無責任」と批判した。投資ファンドを名指して、「バカで強欲で浮気で無責任で脅かす人というわけですから、7つの大罪のかなりの部分がある人たち」との発言が報道された。経産省次官が金融商品、企業統治の基礎知識がないことがばれただけではない。世界の投資家がこの発言の報道を読んで、政府高官がこのようなことを言うなら日本株を持つ理由がないと結論した。日本に対する失望感が一層悪化した。
 北畑次官がその後、記者会見で自分の発言に関して、2月7日の記者会見で「講演録をまとめる段階で訂正をしていただく」と思っていたと自己弁護したが、経産省の次官が自分の言葉の重みをわかっていないのは充分大きな問題で、「赤ちゃんを産む機械」発言、「しょうがない」発言で当事者をかばった安倍政権は投資家が横目で見始めたが、北畑発言を許している福田政権は、投資家があきらめる可能性が高い。

以上のように、新光証券の主張は各データ指標のとおり、日本の力は低く評価されすぎているとの見解です。一方、モルガンスタンレー証券は日本を買えないという主観的見解を展開しています。皆さんはどちらの見解を支持し、我々の日本をどう評価しますか?以上。

投稿者 staff : 2008年03月20日 12:34

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