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2007年08月07日

2007年8月5日 結果が招く未来の予測

環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年8月5日 結果が招く未来の予測

参院選

7月29日の参院選は、自民党と公明党の与党が惨敗しました。完敗の安倍首相は、まさかここまで負けるとは、と思う気持ちだけでしょう。

だが、この結果は、一週間前の新聞で報道されていました。7月22日(日)の各紙は一斉に事前予測を掲載し、日本経済新聞も全国21,563人からの回答と、全国の日経新聞支社・支局の取材も加えて情勢を探ったものを報道しましたが、それと選挙結果を⇒でみますと、今回の事前予測はほぼあたっています。

1.自民党は選挙区と比例代表の合計で40議席割る公算もある。
                         ⇒自民党は37議席。

2.公明党は選挙区で優位なのは2選挙区のみ。比例代表は前回獲得の8議席を視野。
⇒公明党は9議席。

3.民主党は一人区の6割近くで優勢な戦い。選挙区、比例代表の合計では60議席の大台をうかがう。
            ⇒民主党は60議席。

4.共産党は前回並みの4議席と予想される。
   ⇒共産党は3議席。

5.社民党は比例代表の2議席の攻防になっている。
⇒社民党は2議席。

6.国民新党は島根選挙区と比例代表でそれぞれ1議席の可能性がある。
⇒国民新党は2議席。

7.新党日本は比例代表での1議席の確保が微妙だ。
⇒新党日本は1議席。

前回の7月20日レターで「今回の参院選は結果が分かりません。今のところ与党不利の情勢ですが、選挙は終わって見なければ分からない、というのが過去の実績から証明されています」とお伝えしましが、これは完全に誤りました。

事前に専門家からいろいろ聞き、過去の選挙結果も検討してみると、一週間前のマスコミによる事前予測が片一方に傾く、つまり、一つの党が大勝するということが予測される場合、国民はバランスをとる傾向があるので、実際に選挙が終わってみなければ分からない、という意味でお伝えしたのですが、今回は全く事前予測がそのまま当たりました。この過去事例を変えた国民意思、それはどのような意味を持つのでしょうか。

ヨハネスブルグ

 参院選の当日は、南アフリカ・ヨハネスブルグにおりました。事前投票してまいりまして、29日の選挙結果はホテルの部屋で、インターネットで刻々と開票が進むのを見ていましたが、このヨハネスブルグに来て、一つだけ困ったことがありました。それはホテルを出て、一人で街歩きができないことです。

勿論、道路は整備され、立派な家が並び、街路樹も豊かですから、散歩する環境は整っているのですが、一人での外出は困難なのです。

その意味は、出発して機内で、初めてヨハネスブルグの旅行ガイドブックを広げて、分かりました。ガイドブックには「世界で一番危ない都市」と明確に書かれているのです。犯罪発生率が高く、一人歩きは絶対に危険だ、というガイドブックを読んでいくうちに、行くのを止めようと思いましたが、既に飛行機の中ですから戻れません。

改めて、出かける寸前に印刷してきた外務省海外安全ホームページを広げて見ますと、以下のように注意が書かれていました。

「ヨハネスブルグのダウンタウン地区では、殺人、強盗、強姦、恐喝、暴行、ひったくり、車上狙い、麻薬売買等の犯罪が時間、場所を問わず発生しています。

特に、鉄道のヨハネスブルグ中央駅付近やバスターミナルのパークステーション等において、公共交通機関(長距離バス等)を利用する邦人旅行者が、バスターミナル付近を歩行中に路上強盗(突然、背後から首を絞めて複数で襲い所持品を奪う等)に襲われる事件が頻発しており、邦人旅行者にも被害が出ていますので、可能な限り公共交通手段の利用は避け、同地区には立ち入らないようお勧めします」(2007/02/15)

 これは大変な都市で、今まで訪れた中では最も危ないところです。

実際のヨハネスブルグ

一人歩きが出来ないので、ガイドと専用自動車で動くことになります。ガイドは日本女性で、こちらに19年間住んでいて、危険な目に何回も遭遇している事例を話してくれました。自宅にピストル強盗が入って縛られて盗まれたことがあった。風呂から出ると、廊下に男がピストル持って立っていて、お金を渡せば危害を加えない、手を前に出せといい、手を縛られベッドルームに行くと、お手伝いも縛られていた。後で考えるとお手伝いが手引きしたように思っていると言います。

また、車で交差点に停まったら、左側の窓ガラスを割られ、左座席においてあったハンドバックを盗られた。バックの中の現金、パスポート、カード、運転免許証を失った。「スマッシュ・アンド・グラブ」という強奪で、これは窓ガラスをしっかり締めておくと返って割れやすく、少しあけておくと割れにくいが、この時はしっかり締めていたのでやられたと言います。このほかにケーキ屋で二人組みのスリに財布を盗られた事もあった。怖い話を続けて聞いていると、運転手のドイツ系の白人男性も話し出しました。

両親が外出先から戻ってくると、家の前に五人ほど黒人がいて、鍵を開けろ、おとなしくしないと殺すぞ、と脅迫され、家の中に入ると、めぼしいものを所有していたトヨタ車に積みこみ、車ともども盗まれた。このショックでしばらく両親は精神科に通ってリハビリをすることになった。車の後部座席で自分の膝頭が震えだし、ガイドブックと外務省海外安全ホームページは、正確な事実を伝えていることが分かりました。

アパルトヘイトの弊害 

ヨハネスブルグの人々が住むところは、他の国の大都市に見られるような高層アパートメントは少なく、土地が広いので一戸建ての住宅に住んでいますが、それら個々の住宅は、ある広さに区分けされたエリアの中に集められ、その全体の周りを高い塀で囲い、そこの出入り口にはガードマンがいて、一人一人チェックするという、一つのタウンハウスとなっています。

日本の別荘地でも、分譲販売した会社が入り口に門を配置し、出入りの人たちをチェックしているところがありますが、それと同じで、ヨハネスブルグでは集団の個人住宅をガードするシステムとなっています。理由は、勿論、安全対策です。

その一つの住宅の白人女子大学生の家を訪れました。家の前に行きますと、フォーセールと書かれています。売りに出ているのです。両親は既にニュージランドに移住し、学校の関係で娘だけが残っているのです。中は転居前で雑然としていますが、友人が遊びに来ていましたので、お茶を飲みながら雑談しているうちに、徐々に南アフリカの実態について辛らつな意見が出てきました。

それは嘗ての白人優位というシステムが崩れ、政府関係の重要な職には黒人が就いている上に、企業が10人採用する場合は黒人を8人、カラードを2人と法律で決めたため、白人は仕事がなくなっていく傾向で、この国の未来は白人にとって暗い。だから、チャンスがあるならば、外国に移住したいと思っている。つまり、この家の女子大学生が羨ましいと言うのです。後でガイド聞きますと、あれは本当の気持ちだと言います。

こちらは2010年にFIFAワールドサッカーが開催されるのですから、未来に明るい都市づくりの話が聞けると思っていましたが、暗い話に終始しました。

未来は予測どおりになる

南アフリカは1991年、アパルトヘイト関連法が廃止され人種差別の法律が全廃、黒人の地位が向上し、白人が優位性を失い、訪問した女子大学生のような国外移住が増えました。これはアパルトヘイト廃止が起こした予測どおりのことです。

では、日本の未来はどうでしょうか。前回の衆院選で自民党は圧倒的大勝利。今回の参院選では記録的な敗北。衆議院と参議院は完全なねじれ現象。これは、実際に投票した日本国民がつくった結果です。衆院選は郵政民営化という政策で判断、参院選は政府がけしからんという民意で判断。この事態をつくりあげた我々日本国民は、日本の未来の姿をどのように予測しているのでしょうか。その予測どおりになると思います。以上。

投稿者 staff : 2007年08月07日 13:50

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