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2007年06月07日

2007年6月5日 BRICs・・・ロシア編その一

環境×文化×経済 山本紀久雄

2007年6月5日 BRICs・・・ロシア編その一


ホールインワン経済

日本経済は全体的には順調と言われていますが、その内容は外需、つまり、輸出のおかげで持ちこたえている実態です。また、その輸出の中心はBRICsと呼ばれる、ブラジル、ロシア、インド、中国などの途上国であり、そこへの輸出は昭和40年代の中心だった重厚長大産業が元気よく展開しているのが特徴です。

ですから、鉱工業生産が景気を判断する最重要指標のため、この分野が好調なので景気は大きく崩れないと予測されているのです。

そういう実態ですから、今回の景気は、一般の企業や人々には直接の恩恵が少ないとも言われています。いくら「いざなぎ景気を超えて史上最大」と称されても、実感に乏しいのは事実です。

そのことをあるエコノミストが「今回の景気はホールインワン景気」と言い、その心は「パットしない」・・・。なるほど上手いこと言うなと思います。

ロシアの成長

 五月末から六月初めまで、ロシアのモスクワに出張しました。BRICsの一員国です。いろいろな実態に遭遇し、様々な考えを持ちましたので、今回と次回のレターでロシア中心に検討してみたいと思います。

 まず、ロシアについて、皆さんお馴染みの日産自動車ゴーン社長が次のように語っている内容をご紹介します。(2007年3月24日 日経新聞)


「成熟市場で減速に直面する自動車メーカーにとって、BRICsは胸を躍らせるような『ニューフロンティア』だ。中でも、欧州最大の市場に浮上すると予測されるロシアに強い関心が集まっている。

一億四千二百万人が住むロシアでは、千人当たりの自動車保有台数は百六十七台にすぎないが、需要は急速に高まっている。

2005年から06年にかけて販売は26%増え百九十万台になった。外国ブランド車の成長は著しく、70%増の九十七万台に上る。

日産は62%の成長を記録した。日産は年五万台の生産能力を持ち、七百五十人を雇用するサンクトペテルブルグの組立工場を09年に稼動するため二億ドルを投資する。

ロシアは製造業にとって多くの点で課題を抱えている。産業基盤や物流、労働者の能力、供給業者、規制環境などの面で、ロシアは中国やインド、ブラジルと比べて勝っている点が少ない。コストや品質面を見ても、短期的な潜在能力はほかの三カ国より低い。

しかし、昨年六月に初めてサンクトペテルブルグとモスクワを訪問した私を感動させたのは、国の未来を造る決意に燃えるロシアの人々自身だった。私が人を判断するうえで常に重きを置く『意欲』を彼らの中に見た。

70年以上にわたりロシアは海外からの投資の歴史が皆無に等しく、多くの人にとって先行きを予測しづらい国のままだ。効率的な生産を実現するためには、日産のやり方をロシアの供給業者に幅広く浸透させる必要がある。

さらに私たちのやり方で従業員を訓練しなければならない。簡単ではないが、同時にチャンスでもある」


これがロシアに対するゴーン社長の判断です。ロシア人が世界で一番親しみを持つ国はフランス、そこのゴーン社長からこのようなメッセージを、ロシア人はどう受け止めているのか分かりませんが、ロシアの成長は日本の経済成長に重要な影響を与えることは事実です。


ロシアの成長率と日本企業の進出

世界の経済は2003年から06年までの四年間、実質成長率は年5.1%と高率でした。常識的な考えでは3%台の成長率でまず順調という見方ですから、5.1%とは大変な成長率です。

その要因は、世界の消費中心国のアメリカが、いろいろ心配されながらもそれなりに消費が拡大し、加えて、中国、インドが10%を超える成長をし、ロシアも2006年実質成長率6%台を達成し、世界経済全体に大きく貢献しているからです。BRICs全体の成長率5%台という実績は、世界経済全体に対して半分近く(2.5%弱)の寄与率になるとIMFは推定しているほどです。

ロシアの成長要因は、プーチン政権が進める資源外交です。石油や天然ガスの輸出収入で国内を潤し、資金力を拡大した企業が積極的な拡大戦略をとって、中産階級にも浸透し、個人消費が旺盛となっています。

その結果、日本の自動車メーカーの輸出は、トヨタ・日産共に2006年は輸出台数を前年比で60%以上増やし、ロシアの国民が自動車を買う余裕が出ているのです。

一方、日本の安倍首相はロシア重視の姿勢を示しています。安倍首相は対ソ連外交に尽力した父、安倍晋太郎氏の影響か「ロシアは大事な隣国」と位置づけているようです。2007年一月はモスクワで初の両国次官級戦略対話、二月にはフラトコフ首相の来日。五月に日本の麻生太郎外相の日本大使館落成記念と合わせたモスクワ訪問もあり、お互いの関係を深めようとして、日本の企業もロシア各地に進出しています。

サンクトペテルブルグには、トヨタ・日産・スズキ・三菱自動車が工場建設・検討を進め、モスクワでは石川島播磨重工業が現地トラック大手と合弁、旭硝子がガラス工場建設、サハリン沖資源開発事業サハリン1に伊藤忠・丸紅などが出資、サハリン2には三井物産・三菱商事などが出資することになっています。


問題はインフラ整備・・・渋滞道路

素晴らしい成長をしているロシアですが、実際に訪れてみると問題は山積しています。

まず、最初に、空港からホテルまでの間で発生した事件をお伝えしたいと思います。

夕方4時にモスクワ・シェレメチェボ国際空港に着き、入国審査はビザがあるため、女性係官はじろりとこちらの顔を確認するだけで、簡単に通過しました。

空港から市内中心地まで35kmで、タクシーで40USドル、約一時間とガイドブックにありますが、タクシーはいろいろ難しいと書いてあるので、知人がベンツ車をチャーターして迎えに来てくれました。

この日の気温は30度を超え、平年5月の平均気温は最高20度ですから、異常気象のようですが、もっと暑いのはベンツの車内です。クーラーが壊れていて、窓は運転手席の窓しか開かないのです。

市内と空港まで列車や電車はなく、手段は車だけなのに高速道路はないとの説明にウーンと唸り、顔面全体に滴る汗を拭うだけです。

実際に走り出して、すぐに渋滞です。四車線もある広い道路に車がびっしりで、全然動きません。この状態はモスクワ市内だったらどこでも同じだと言います。

そこに、突然、超中古車ベンツが妙な音を出しエンストしました。慌てて知人と運転手が道路端にベンツを押し動かし駐車させましたが、まだまだホテルまで遠い地点です。

知人にパスポートだけ持って車から出るよう指示され、広い歩道をバス停へ向かいましたが、驚いたことに歩いている歩道の後ろから車が走ってくるのです。それも乗り合いミニバスで、その後ろに乗用車もつながっています。歩道も実質車道になっているのです。

マナーが悪いのはベトナム・ハノイで慣れていますが、ハノイはオートバイ。だが、ここモスクワは冬場の氷結状態道路となるので、バイクでは危険なので四輪者です。モスクワの道路事情がこれほど酷い実態とは、どのガイドブックにも書いてありません。


問題はインフラ整備・・・ホテル宿泊代

モスクワの観光客は、他の大都市に比較し少ないと言われています。理由はホテル代がバカ高いからです。ビザ取得のためにはホテルの予約が必要ですから、最初、旅行社経由でホテルを探しましたが、回答は一泊六万円から八万円だと言います。ビックリしてモスクワ行きをあきらめたところ、知人が妥当適切価格の日本人経営ホテルを紹介してくれましたが、一般的な旅行社ルートでは桁外れの料金となり易いので、観光目的でモスクワを訪れるのは難しいだろうと思います。次回もモスクワ事件は続きます。以上。

投稿者 staff : 2007年06月07日 23:14

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