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2007年04月20日

2007年4月20日 普遍性で考える

 環境×文化×経済 山本紀久雄
2007年4月20日 普遍性で考える

4月8日の選挙は現職勝利が多数
 第16回統一地方選は4月8日、前半戦の13都道県知事選と4政令指定市長・県会議員・市会議員選などが行われました。
 さいたま市浦和区も市議会議員選挙で、毎日うるさい選挙カーが走り回り、8日の夜半に議席が決まりました。トップ当選は自宅すぐ前の40歳民主党議員、二位に三倍の得票差で、いつもにこやかな笑顔で感じのよい挨拶をする女性が、この議員の奥さんです。二位は市議会議長もつとめた自民党大物議員、この人物はさいたま市管轄の福祉法人の代表で、私がそこの評議員をしている関係で、投票は悩みましたが、結局、当選者は定数八人中現職が七人、元職が一人という結果で新人当選はありませんでした。

 知事選の方も、東京の石原都知事はじめ現職九人が全員再選されました。日経新聞春秋は「民意は結局、雪崩をうたず地滑りもしなかった」と伝えましたが、この選挙結果は花見と同じでないかと思います。

現職勝利は花見と同じ
 日本の花見は独特で、一本二本の桜花を見るのでなく、大勢の群集で、群がっている桜を、飲食しながら見る、こういう花見は世界中にないと専門家が指摘しています。花の観賞は世界中で当たり前のことですが「郡桜、飲食、郡集」という三要素が独特なのです。
 確かに、桜の名所に行きますと、全体の郡桜がこちらの気持ちを豊かにさせ、全体の調和が美しさを創造しています。よく見れば、枯れかかった幹枝もあるはずですが、郡桜全体の咲き誇りが、個別の問題点を覆い隠し、桜木の下で飲食する郡集の酔いが、それに輪をかけます。
 選挙で現職が多数勝利したのも、この郡集心理と同じではないかと思います。個々には問題、不満があるでしょうが、所属する行政全体の運営について、雪崩を起す程ではない、という民意を反映したと思います。

マスコミで報道される事件・事故
 東京の石原都知事が当選談話で「嫌なことが多い日本の現状をオリンピックで変えたい」と発言しました。今の日本は問題が多いという認識を持っているのです。
また、毎日々、マスコミは多くの事件・事故を、報道のトップ記事として報道していることが多い状況です。先日、元検事の人とお会いしたら「どうして日本は、このように問題が多いのでしょうか」という発言があり、周りの人も同調する雰囲気で、日本の現状を問題点多しと考えていることが分かりました。
 マスコミが、目立つ事件・事故を取り上げ、そこに関心を向ければ、このような気持ちになるのも当然と思います。

よいことを取り上げればたくさんある
 選挙の翌日(9日)の日経新聞「核心」は次のように述べました。
1.先月、国土交通省が発表した公示地価は全国平均で16年ぶりにプラスとなった。土地デフレもようやく終わった。
2.2002年に始まる景気回復は「実感がない」と言われながら「いざなぎ景気」を抜いて戦後最長になると、さすがに御利益が目に見えてきた。
3.三選を果した石原慎太郎東京都知事は、選挙戦中の記者会見で「(二期八年で)都財政は完全に再建できた」と胸張った。
4.東京都は特に恵まれているが、地方全体でも07年度末の自治体の債務残高が四年ぶりに割る見通しで、国よりひと足早く借金財政のピークを脱した。
5.国も、07年度予算では、新規国債発行額を過去最大幅の4.5兆円圧縮できた。2011年度に国と地方合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させるという政府目標の前倒し達成も期待できる。景気回復のおかげである。
6.人口減にも歯止めがかかる。05年は死亡者数が出生者数を上回り「人口減少時代に入った」と騒がれたが、人口動態統計によると昨年(06年)11月、国内の日本人の人口が、一年一ヶ月ぶりに自然増に転じた。団塊ジュニアの婚姻数、出生数が増えたためだ。
7.企業の好業績は株価を押し上げ、公的年金や企業年金の運用利回りが改善し制度への信頼が増す。
この羅列の後に「日本経済に内在するさまざまな『難点』が持続的な景気拡大で覆い隠されている」と指摘し「景気が悪くなると好循環が逆転し、隠れた゛七難゛が再び表面化することも覚悟しなければならない」と結んでいます。
 つまり、今回の景気拡大を更にしっかりしたものにしていきたい、という主張が成されているのですが、最近の日本について問題点を探せばいろいろあるが、良いところを探してもいろいろある、という事例です。

事件・事故は減っている
 いったい全体、日本の問題点の事件・事故は増えているのでしょうか。減っているのでしょうか。警察庁のホームページからひろってみたいと思います。

          刑法犯の認知件数     凶悪犯
  平成14年  2,853,739件    12,567件
    15年  2,790,136     13,658
    16年  2,562,767     13,064
    17年  2,269,293     11,360
    18年  2,050,850     10,124

 刑法犯の認知件数は、平成14年まで7年連続して戦後最多を記録していましたが、平成15年以降毎年減少しています。
 平成14年が2,853,739件に対し、平成18年が2,050,850件ですから、4年間で802,889件減少しています。28%の減少率です。
 凶悪犯は平成15年の13,658件まで増加傾向でした。しかし、その後毎年減少しまして平成18年は10,124件ですから、平成15年に対し3,534件減少しています。26%の減少率です。また、ご存知の通り、交通事故も減っています。
 しかし、自殺者数は減っていません。平成9年までは年間二万人台であったのに、平成10年から急に増加し、年間三万人を超す人が自殺するようになりました。
 年齢的には中高年と高齢者が多く、その要因として「うつ病にかかっている割合が多い」と政府の自殺総合対策の在り方検討会が、4月9日の最終報告の中で指摘し、急速な改善は難しい状況という結論です。
 だが、テレビ番組がトップで報道していることが多い、事件・事故の発生件数はデータで見る通り、確実に減少している、という事実を認識する必要があります。

普遍性で考える
 物事の判断は事実を「普遍性と特殊性」に分けて考えることが大事です。マスコミから伝えられる事実報道の、どちらが主流で、どちらが支流なのかということです。バブル崩壊後の、当時の心理状態を省みますと、日本人の多くはマイナス不安に駆られました。「公になった問題は氷山の一角ではないか」「問題がさらに拡大する可能性が大きいのではないか」という心配・疑問に襲われ、先行き悲観論が多数見解になり、これが一気に経済・社会の停滞を招いたとも言えます。
 しかし、日経新聞「核心」の記事が指摘している内容、警察庁が発表している犯罪件数の減少、これらから考えますと、日本人の多くは現状認識として、全体方向の前途をプラスに受け止めた結果が「民意は結局、雪崩をうたず地滑りもしなかった」という今回の選挙結果として示されたのではないか、と考えています。
以上。

投稿者 Master : 2007年04月20日 16:29

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