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2006年09月05日

2006年9月5日 小泉政権後の改革時流

環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年9月5日 小泉政権後の改革時流

新しい時流
日本は明治維新と第二次世界大戦によって大混乱を経験すると同時に、その前後でガラッと思想が変わりました。江戸時代の東洋思想が明治以降は西洋思想に変わり、第二次世界大戦までの軍国主義が戦後は民主主義に変わりました。

今の時代もこれと同じような思想変化をしていると思います。新しい時代が来ていることを分かっている人には、新しい思想が分かっている。だが、新しい時代が来ていることを認識していない人には、新しい時代思想が分からない。という思想格差が発生しています。何を想い、何を大事にするか。時流を見誤ってはいけないと思います。

ペルーへ新婚旅行
水道局から連絡があり、先日、水道メーター前後に使用されている鉛給水管を、ステンレス管に取り替える工事が行われました。朝一番の工事で、興味があったので工事を見学していたら、女性の現場監督が来て、工事担当者と雑談している中で、この女性が近々結婚するらしく、新婚旅行にペルーへ行くということが分かりました。
ペルーに新婚旅行として行く理由は「このチャンスでないと今後行けないから」というものでした。ペルーは遠く、簡単には行けないので、新婚旅行という一大セレモニーの際に思い切っていく、という意味です。
そこで、ペルーに行ったことのある体験者として、ペルー旅行の懸念事項を話しました。一つはナスカの地上絵を見るためのセスナ機は、急旋回するので大体の人が飛行機酔いをすること。もう一つは高度3000メートル以上の高地に一挙に行くので、多くの人が高山病になること。特に高山病になると、ひどい風邪を引いた状態と同じく、食事は出来ず、下痢が激しく、歩くのもつらく、観光バスの中に座ったままでツアー行程を過ごすだけ、という最悪の状況で楽しい新婚気分は吹っ飛ぶことになってしまう。
この間、女性現場監督の目と顔が徐々に変わっていき、工事中なのにその場からいなくなりました。多分、婚約者に電話するために消えたと推測しました。

ぬりえの心理
この夏は、暑い日が続く中、早朝と午前中の机に向かい「ぬりえの心理」を書き上げました。昨年出版した「ぬりえ文化」は「入門ガイド編」、今回の「ぬりえの心理」は「中級編」の位置づけとし、ぬりえに関係する各立場、子ども、親、出版社、販売者、ぬりえブックなどの立場から読みやすいエッセー風に心理分析を行いました。書き方は擬人化法を採り入れ、各章ごとに解説としてのコラムも入れ、英文にして世界にも発信するので、内容は日本だけにとらわれず、世界各地の実態から編集構成しました。
この「ぬりえの心理」を書くため、多くの心理学の研究専門書を読みました。その結果、明確に分かったことがあります。それは、人間とは潜在意識が行動を決めていくということです。大人になった人間が示す好き嫌い、わがまま、頑固さ、柔らかさなどの個人的性格は、幼少期に形成され、それが潜在意識として脳の奥底に刻み込まれていて、顕在意識が働いていないとき、つまり、無意識下のときは潜在意識によって行動していることが分かりました。
また、大人であることの特徴は「幼少期時代を忘れる」こととも分かりました。すべての人が幼少期時代を過ごしてきたのに、すべての人が幼少期時代を忘れています。忘れることが大人になる第一歩なのです。だから大人になって幼少期時代の心理を思い出そうとしても、特別で特殊なこと以外は浮かんでこないのです。つまり、自分が幼少期時代に、どのような心理で日常過ごしてきたかということ、それを大人は忘れて行動しているのです。
しかし、今生きていている行動の原点に、幼少期の体験が存在しているということは事実ですから、幼少期にどのような教育と環境で育てられたかが、大人の行動を決めている重要なファクターなのです。親の育て方が、子どもの将来の生き方適否妥当性、それに大きく影響させています。幼少期は遊びが人生ですから、親が与える遊び玩具に影響を受けます。その遊び一つとしてのぬりえが位置づけられます。高がぬりえですが、されどぬりえです。

小泉首相
小泉首相が今月で任期を終えます。政権末期でありながら「指導力がある」と支持する人が41%(直近日経新聞社調査)という実態です。
この小泉首相五年半の政治について、このところ各立場から分析し論評することが多く行われています。小泉首相は自らの政治行動を多弁に解説調で語ることは少なく、加えて、言葉のセンテンスが短いので、論評しようとする識者が取る方法は、小泉首相を観察するしかありません。小泉首相の行動結果を観察し、観察した後に小泉さんは「このような考え」ではないかと推測することになります。小泉首相も人間ですから、すべての人と同じように幼少期時代に潜在意識が形成されています。顕在意識で行動していないときは、無意識下の行動になりますから、潜在意識が表面化するのは当然です。
特に人が追い詰められ、危機に陥ったときは、その人の潜在意識が如実に出ます。小泉首相の最大の危機は郵政民営化が参議院で否決されたときでした。そのとき採った行動は「郵政解散」でした。解散という首相としての最高権限の行使、様々な異論が噴出しましたが決断しました。それを論理的に考察して採った行動と見るか、潜在意識が大きく影響して決断したと考えるか、それは意見が分かれるところですが、一般的には小泉首相の蛮勇とも言われているほどですから、通常の感覚ではなしえない政治行動だったのでしょう。ということは小泉首相が持つ人間としての基礎力、理屈でなく感性とも言える本音の人間力、そこから決断した結果と思いますが、これは潜在意識が影響したと考えたいと思います。

小泉政治の改革目的
バブル崩壊の始まりである地価の下落は15年前。1991年は土地神話が崩れた年でした。それから長いこと日本経済は低迷に喘ぎ、日本は終わりの時代を迎えたとも、衰亡化への足音が迫ってきたとも、某国のトップからは「日本はなくなる」とも発言され、悔しい思いをしたこともありましたが、今は、政府の月例経済報告で「デフレ」という表現が削除され、企業業績もバブル期を超え、銀行の不良債権の処理も進み、雇用も改善に向かい、税収も増加し、全国の公示地価が取引価格を加味した加重平均で15年ぶりに上昇に転じました。
日本経済は「もはやバブル後でない」言え、この状況をつくり出したのは小泉首相のリーダーシップであると、素直に評価すべきと思います。しかし、一方で、格差の拡大や不均衡問題を指摘する声、つまり、構造改革路線の修正を求める意見も大きくあります。
小泉首相は次の首相に「構造改革の継承」を条件として求めています。この「構造改革の継承」とは何を意味するのか。それについて小林慶一郎氏(独立行政法人経済産業研究所)の見解をご紹介したいと思います。
「結論を述べれば構造改革の継承とは、市場経済システムとは豊かさを得るための手段として考えるのでなく、政治が目指すべき目的と考えることである。小泉首相はおそらく戦後史上初めて、市場経済システムそのものを政治が目指すべき目的価値であると暗黙に宣言した首相だった。この立場に立てば、市場経済システムをよりよきものにすることに目的があるのであって、そのために解決しなければならない問題が格差の拡大や不均衡であると捉える必要がある。
多くの政治家は、市場経済システムを単に国を豊かにするため、つまり、カネもうけのための手段と考えている。小泉首相の改革なくして成長なし、というスローガンは経済成長という豊かさよりも、市場経済システムを健全に安定させるということを優先させる姿勢を示している。この姿勢は自由主義をお題目でなく、実質を伴う政治理念として真剣に追求することであり、そのところに歴代政権にない熱烈な支持を国民から受けたのだ」
見事な小泉首相への観察力と敬服します。小泉首相の脳細胞の奥底に、市場経済システムを健全に安定させるためには自由主義でなければならないという強い意識、これは潜在意識とも言うべき分野からの発想と考えますが、それを小林慶一郎氏は見抜き、国民も暗黙に理解し、その結果が「指導力がある」と41%が支持している背景と思います。

目的と手段
ペルーに行くのは目的か手段か。楽しい新婚旅行が目的ならばペルーは条件的に無理があります。小泉首相の改革を継承する次の首相が登場する目的は何か。市場経済システムを健全に安定させるということ、これを手段としてではなく、目的として次期首相も継承すると受け止めるならば、構造改革目的は変化しないという時流を理解する必要があります。以上。

投稿者 Master : 2006年09月05日 04:56

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