« 「この国のかたち」から見えてくるもの | メイン | 4月例会の予告 »

2006年02月28日

4月例会開催地 曙ブレーキ工業見学記

経営ゼミナール4月見学地・曙ブレーキ工業株式会社取材記
事務局・田中達也(2006年2月10日見学)

 経営ゼミナール4月例会で見学をいたします、曙ブレーキ工業株式会社に、事前下見に出かけてまいりました。

 最寄りの駅、羽生に降り立つと、プルッ、寒い。快晴にもかかわらす関東の空っ風が身体の熱を奪います。春はまだのようです。
 羽生駅よりタクシーに乗り、曙ブレーキ工業へ。車窓から見える羽生の町はこぢんまりした素朴で静かな町です。市役所を横切り、住宅街を走っていると突然、視界がパッと開けたかと思うと、前面ガラス張りの大きな建物が目に飛び込んできました。ウワ〜っと思わず声をあげてしまいました。それが曙ブレーキ工業の社屋だったのです。まるで外国の美術館のようです。普通の民家の中に建つそれは、映画のセットのようにも感じました。周りの景観の中でそれだけ異彩を放っていたのです。
 入口を入るとすぐ受付カウンターです。そこは無人で、画面から面談担当者を呼び出す仕組みになっています。珍しくはないシステムですが、担当者を検索すると、従業員の顔写真がズラッと出てきます。無人の機械システムなのになぜか温かみを感じました。
 正面の壁はすべてガラスである上に床や柱などすべて白いので、とても明るい雰囲気です。従業員の方々も最初は戸惑われて、特に出勤時は朝日が射し込んですべてがキラキラ光り、柱に気づかず頭をぶつけたこともあったとか。それほど「光」を最大限に取り入れた温かみのある空間です。机、イスなどの什器や部屋の表示文字など建物の細部のデザインもオシャレで、オフィスというよりデザイナーズショールームといった印象でした。

 担当者と打ち合わせをしたあとオフィスの見学をさせていただきました。どこを見ても驚きの連続でした。
 まずはオフィス。壁も柱もない広大な空間です。800坪あるそうです。そこに400名の皆さんが働いていらっしゃいます。部署による仕切りもなし、専用の机もなし、書類も配線もなくスッキリ清潔な空間です。個人の荷物はカート付のボックスに収納し、自由に移動できるようになっています。一緒のプロジェクトにかかわる人間がその都度適当な机に陣取り、一人一台のPCを叩きながら打ち合わせをするスタイルで業務をおこなっておられます。これは役付きの方とて例外ではなく、従業員全員が同じフロア、同じ机で仕事をされています。PCは無線LANで結ばれているのでどこでも仕事ができるのです。これだけの空間にこれだけの人が集っている光景は本当に圧倒されます。
 このことは2つのメリットをもたらしていると思います。ひとつは部署間の垣根がなくなること。これによってチーム間のコミュニケーション不足による開発時間のロスや確執が解消されます。もうひとつは上司・部下間のコミュニケーションが円滑に行えるということ。曙ブレーキでは「さんづけ」運動というのを励行されておられます。これは相手を肩書きで呼ぶのではなく「〜さん」と呼ぶ習慣づけだそうで、これにより役職の区別なく意志の疎通が図れるのです。ですから相手がどういう役職の人か従業員同士も把握していないことが多いのだそうです。他の職場では考えられないことだと思います。これらの、ヨコの垣根とタテの垣根を取り払い、プロジェクト遂行のために一致協力する場づくりをされているのです。
 このことは役員・社長にも及んでいます。副社長室と社長室は独立しているのですが、ここもガラス張りで中が丸見えです。悪いことはできません。もっと驚いたのは、社長が在籍のときはアポなしで会えることです。全社員が社長の手の空いたスキを狙って提案や相談をしにいく場面が日常見られるのだそうです。スーパーフラット&スーパーオープンな職場環境です。「風通しがよい」という表現がありますが、ここは風通しがよいどころか、草原でピクニックをしているかのような、開放的で爽やかな環境でした。

 とにかく驚きの職場環境でした。これを企画された方、デザインされた方、そして何よりもこのような環境にすることにGOサインを出された社長さんに敬服してしまいました。ここまで従業員に分かりやすい形で環境を提供すると、イヤでも働いている皆さんの意識が変化せざるを得ないと思います。ヨコにもタテにもシームレスでオープンな環境、そして、ひとつのフロアに社長を含む全員が集って様々なプロジェクトを進める環境。このオープンな環境が結果として会社としての一体感を生んでいるように思いました。
 この環境が従業員の活気を生み、活気がパワーとなり、それが会社のパワーとなって外に発信され、こんにちの業績に反映されているように感じました。
 曙ブレーキ工業さんの元気の源を見た思いがしました。
                       おわり

投稿者 lefthand : 2006年02月28日 15:14

コメント