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2006年02月05日

ルールをつくれるか

YAMAMOTO・レター 環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年2月5日 ルールをつくれるか

日本経済の状況
「昨年2005年は日本経済にとって、先行きの見通しが明るい、希望にみちた年であった。多くの企業が創業以来の最高収益を記録し、株式市場はバブル期以来ともいえる活況を呈し、日経平均は年間40%もの上昇を示した。失業率の低下は数字的にはそれほどではなかったものの、大学新卒への求人数がバブル期なみになるなど、雇用環境は明らかに好転した。銀行の不良債権問題は、人々の話題にも上がらなくなった。つい数年間までは、企業・銀行の決算時期のたびに3月危機、9月危機が喧伝されていたことを思い起こせば、まったくの様変わりである。日本経済に残されたのは『デフレ脱却』という課題である」。この内容は専修大学野口旭教授の見解です。

これに多くの人が頷くと思いますが、勿論、反対する論者も多数います。しかし、元企画庁次官の赤羽隆夫氏は、この反対論者に対して「十数年に及ぶ長期低迷を体験したので、人々が確信を持ちにくいのも無理はないが、拡張力は相当に強い。基本は借金、労働力、設備のデフレ3兄弟によるハラスメント(苦痛)がなくなり、バブルの後遺症がほぼ癒えたこと。もうひとつは景気対策はやらないと公言した小泉経済政策の不作為が寄与した」と語り、デフレからの脱却も間違いないと断言します。
このように日本経済の順調さを経済専門家が述べ、それらのコメントを日本国民の多くが受け入れていますが、このような短い内容で一つの国についてコメントできるということは、やはり日本は単一民族であり、分かりやすい国といえると思います。

アメリカの複雑さ
NYを訪れジョンF.ケネディ国際空港からマンハッタンまで、両サイドの道筋はビルの立ち並びと、レンガ壁に鉄階段、消火栓、下水溝から吹き出す蒸気、お馴染み「ビックアップル」風景が続きます。だが、その風景の中味は簡単には理解できません。
理解できないことは、街中で歩くとすぐに分かります。人々の顔が皆違って、国際的すぎるのです。移民の数が多く、100の国籍を持つといわれ、あらゆる言語が飛び交っている上に、住民が出身地区ごとに共同体を構成しているアイルランド人地区や、リトルイタリア、チャイナタウン、ユダヤ人、アフリカに韓国地区、更にプエルトリコ人は飛び地を構成していて、ひとつの文化で括れません。
更に、アメリカが日本ともっとも異なるところは人口です。人の数が日本の2.4倍であるという単純な意味でなく、人口が増え続けているという意味で反対なのです。アメリカ国勢調査局の推計によると、1月現在の人口は29,790万人で、毎月19万人程度増えていっています。8秒に一人の赤ちゃんが生まれ、31秒に一人のペースで移民が増えているのです。つまり、赤ちゃんの誕生と移民の流入が人口増加の要因で、今年中には3億人を超えるのは間違いありません。これが日本と根本的に異なる背景条件の違いです。

そばが受け入れられている
マンハッタンの真ん中のホテルロビー、ここで打ち合わせすべく相手を待ちながら、周りの人々を見ていると、大抵は大きな声で喋っています。特に身振り手振りで激しいのは、隣の椅子に座った中国系女性二人です。最初は白人男性を交えて書類を広げて話していましたが、その白人男性が去ってからは二人の間でケンカ腰の会話が続いています。書類を指し、手で書類を叩き、激しい言い合いは戦っているとも思える激しさです。
一方、こちらは静かなものです。NY在籍一流企業幹部との打ち合わせは、お互い穏やかな世間話から入って、こちらが提案書類を読み上げるのも静かで、スムースな質疑応答が終わると、相手が昼食に誘ってくれました。親切です。この企業へ提案するためにNYに来たのが最大の目的でしたから、友好的雰囲気で終わりホッとし、誘われた近くの日本そばレストランへ参りました。
ちょうど12時の昼食時、入ってビックリ超満員です。予約してくれていたのでテーブルが確保されていましたが、真ん中の相席専用席も埋まっています。日本人らしき人もいますが、殆どは近くのビジネスマンと見受けました。店内案内係りに聞いてみますと、昼間はいつもこの調子で満員との事です。そばを箸で巧みに食べています。違いは「そばが短く量が多い」という程度で、汁も関東で普通に出される濃さの味です。そば粉はカナダの専用畑で収穫していると、店のチラシに書いてあります。

国の運営ルール
NY州当局が推計したウォール街の金融機関が支給した、昨年ボーナス総額が発表されました。これまでの最高だった2000年を20億ドル上回る215億ドル(2兆4600億円)に達しました。ネットバブルの最盛期を上回る水準で、一人当たりも前年比10%増の12.5万ドル(1400万円)と過去最高を示しました。ですからNYの景気はよいのです。安くはないそばランチにビジネスマンが殺到するのも、このような実態からかと納得します。
しかし、同じタイミングに報道されるのは、アメリカに住む16歳以上の男女のうち
20人に1人は、英語が読めないという事実です。これはアメリカ教育省の「2003年読解力調査」から判明した事実ですが、約1100万人の国民が国語としての英語を理解できないということに驚きます。ヒスパニック系やアジア系がその該当人種との事で、対策として公立学校の改革を推し進めるとの事ですが、これは大変と思います。
言葉で伝え理解してもらうことが、お互いの前提行動です。そのお互いの理解が進まない環境では、結果は不十分な内容になります。国の政策も、人との関係も、すべてはお互いの理解度で決まっていくので、そのためには共通言語が必要ですが、それができない人たちが増えているという事、それは移民が増加しているからで、その増加で人口増が図られている国の運営は難しいと感じます。
したがって、言葉とは別の運営ルールが必要であり、それが暗黙裡に存在しているのではないかと強く感じます。言葉ではない国の運営ルールがあるのではないか、と思います。

文化を伝える
「ぬりえNY展」を開催するに当たって、最も注意しなければならないのは、この「言葉ではない国の運営ルール」の確認であると思いました。100もの人種が一緒に生活していて、それらの人々が一人一人異なった行動をとりつつも、人々の底辺にあって、アメリカとして一つの国運営している何かがあって、その何かがアメリカの底辺に共通部分として存在し、アメリカの国運営を支えているはずです。それをつかみ整理し、そこから「ぬりえNY展」を伝えていくことが絶対要件と感じました。
では、それは何か。それが実は分かり難く、そこに苦労しているところです。言葉でいえば「きいちのぬりえをアメリカ人が理解し納得する論理」という事になりますが、それをつかむためには、アメリカ人の立場に立った論理構成が必要になります。しかもそれには英語も話せない国民が20人に1人いて、ケンカ腰の打ち合わせが当たり前で、その一方では過去最高のボーナス支給を受けている、というように混在している実態の中でつくりあげる必要がありますから、ある一人の見解を聞いて、それでもって論理構成するということでは、多くの人に対応することができず、不十分な成果で終わります。
仮にそのところを割り切って、昼食に日本そばレストランを訪れるマンハッタン中心地のビジネスマンのみを対象にする、ということも考えられますが、それでは限られた層に対する理解だけで終わり、今後の展開に影響が出てきて将来に問題が残ります。
アメリカは日本と違って、多くの複雑な価値観で構成されている国家なのです。

ルールをつくれるか
村上隆というアーチストがいます。現代の日本人で最もNYで成功した一人です。その村上隆が次のように語っています。「アメリカに行ってみたら、自分が常につぶやいていた日本のアートシーンなんて誰も知らなくて、まったくの意味のない、関係のないものに過ぎなかった。そうか、アメリカのルール=ニューヨーク・アート法というのを勉強しなければ、僕はアートの世界で生き残っていけないんだ。そう身に沁みて自覚したのが起点だった」更に「アメリカ人の中に、『無意識のうちに日本のサブカルチャーを刷り込まれていた自分は実は日本人だった』という記憶を呼び覚ます形の『勝ち負け』とはまた異なる意味での記憶の継承追及が必要だ」と語っています。この村上隆が追求し成功したことを今年9月開催の「NYぬりえ展」で可能か。それが今一番の課題と考えています。以上。

投稿者 Master : 2006年02月05日 11:21

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