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2005年02月21日

好感度第一位国家ビジョンに参加する

YAMAMOTO・レタ-
環境×文化×経済 山本紀久雄
2005年2月20日 好感度第一位国家ビジョンに参加する

財政健全化へイタリアとカナダが採った方法
さいたま新都心の関東財務局ビルには立派な講堂があって、そこの活用を図るため「さいたま新都心大学」という企画が昨年から行われています。授業料を支払って出席するのは地元の人達です。2月9日は財務省主計局課長からの「日本の財政状況」の実態説明でした。霞ヶ関で政策立案に直接携わっている担当課長からの説明ですので、分かりやすく出席者から好評です。説明が終わり質問時間となり、質問のトップバッタ-は主婦でした。

「1991年の時に財政収支が最悪だったイタリア・カナダが、2005年時点で先進国の上位という立派な改善を示しているが、そのためにどのような政策を採ったのか」
この質問の裏には、日本が1991年時点で先進国トップの健全財政であったが、現在では最も悪化しているという実態からの質問であり、「日本を改善したい」という気持からの発言です。
回答は「イタリアは年金給付の削減、公共事業の抑制、増税と財務警察による厳しい脱税摘発実行であり、カナダは国から各州に対する独立採算財政の徹底化、つまり、補助金政策の見直しを行って、各州に自己責任で州財政の責任をもたせたことだ」というものでした。説明を聞いてみれば最もなことばかりの健全財政化への方法です。

日刊ゲンダイ特集記事
日刊ゲンダイというタブロイド版新聞が、1月17日から五回にわたって「大増税の時代が襲い来る」という記事を連載しました。その内容が参考になりますのでご紹介します。
第一回 2004年は配偶者控除の一部廃止、消費税免税点の1000万への引き下げ、酒・タバコ増税、2005年は年金課税の強化、低所得者層への人頭税としての住民税均等割増税、定率減税の縮小・見直し、所得控除の縮小・見直し、法人への外形標準課税(法人への人頭税)の検討、2007年には消費税の二桁化実施(財界案では15%前後、財政制度審議会試算では21%)
第二回 老年者控除の廃止(年間所得1000万円以下の高齢者の50万円控除の廃止)、公的年金控除の縮小(年金夫婦生活の課税最低限が285万円から205万円に引き下げ)、介護保険利用者の自己負担部分の拡大、在職老齢年金制度の年金カット(65歳以上の厚生年金需給者の年金カット)
第三回 欧州並みの高い消費税率となり、欧州で実施されている食料品などの日用品「軽減税率」は当面導入しない方針(所得の低い人ほど税負担が重くなる逆進性が強まる)、消費税率が21%になると、10年後の潜在的国民負担率(国民所得に占める税、社会保険料、財政赤字の割合)は50.6%に上昇(今年度は45.1%) 
第4回・五回は省略しますが、最後に次のように結論化しています。
「国家公務員96万人、地方公務員350万人、準公務員も500万人いる。合計1000万人、家族を合わせると3000万人、実に国民の4分の1が公務員で食べているのだ。だから公務員を半分にし、福祉も半分にし、税金も半分にすべきだ」と。
日刊ゲンダイの特集、読んでみれば増税路線に向かっていくことがよく分かりますが、どうしてこのような増税路線を採らねばならないのか、それは国家の財政赤字が膨大であるからです。では、その赤字はどうして発生したのか。それは1991年以降のマクロ政策の失敗にあったといわざるを得ません。政治家の採った政策の失敗と、それを許してきた国民のつけが廻ってきたのです。
かってイタリアは世界最大の財政赤字国でした。そのときのイタリアに対する外国からの評価はどうだったのでしょう。その時のイタリアの評判は最低でした。イタリア人はだらしないから国家財政もダメなのだ。という評価だったのです。
今のイタリアは改善しましたが、イタリアに変わって先進国第一の財政悪化国はどこなのか。日本です。ということは外国人からみた日本の評価は、かってのイタリアと同じようにみられ、考えられているとしたら、日本は「好感度が高い国」とはいえないのです。

自殺者とその要因
警察庁が発表した自殺者数は2003年度34,427人、前年対比107%です。この数字は主要国と比較して、異常に高いことはすでにご承知と思います。アメリカが
31,655人(2002年)で、人口が2倍以上ですから、自殺死亡率は日本がアメリカの倍以上であり、イギリス・イタリアの3倍前後、ドイツの1.5倍以上、フランスの1.3倍程度に相当します。また、2004年以降は集団自殺が頻発しています。
動機別で最も自殺者が多いのは「健康問題」で15,416人、次に「経済問題」で
8,897人となっていますが、この「経済問題」が最も高い増加率12%となっています。しかし、ここでよく考えてみれば、日本は世界の中で豊かな国として認識されているのに、その豊かな国でどうして経済問題という「生活苦」で死ななければならないのか、ということです。また、世界中には貧困から教育を受けられない多くの若者がいるが、日本はこの面でも恵まれた環境にあって何の不足もないのに、どうして人生に夢がないと訴え、ある者はキレて他者を傷つけ、ある者は閉じこもりとなり、ある者はリストカットをくりかえしているのか、ということです。

生きる意味
今年の1月20日に出版された「生きる意味」(東京工業大学院助教授 上田紀行著 岩波新書)は自殺の要因について鋭く分析し、参考になりますのでご紹介します。
「自殺の増加原因を単に不況のせいにする言動が目立つ。「経済力」の不振が全ての原因だというのだ。景気が悪いから、人々の生きる力が弱まっている。だからもっと『強い』日本にしなければならないという言動は一見魅力的だ。確かに不況の克服は重要かつ、危急の課題である。しかし、経済が好調なときは人々の元気がよくて、不況になると一気に顔色が悪くなるような社会を、真に『強い』社会と呼べるだろうか。不況でもしぶとく生きていく、そこにも生きる楽しみと人生の確かさを実感できるような人間こそが、今こそ求められているのではないだろうか。
現代の日本が直面している最大の問題は、経済不況ではなく『生きる意味の不況』だ。それがこの本の出発点である。どんな金持ちでも、いい家に住もうとも、生きる意味がないと感じ、生きる意欲が湧いてこなければ、人間は輝かない。この地球上で、不況とはいえ大変な豊かさを享受している私たちが直面しているのは、『生きる意味』が分からないという、意味の病なのである。
今求められているのは、私たちが自分自身のかけがえのなさを取り戻すこと、既製服のようなお仕着せの『生きる意味』ではなく、自分自身のオ-ダ-メイドの『生きる意味』を創り出すことである。一人ひとりの多様な『生きる意味』へ熱い思いを持つ時代、そこにこそ真に豊かな成熟した社会への道が開かれている」
成る程と思います。一人ひとりが「生きる意味」を持って「輝く自分人生」を創るところに、自殺者が少ない「好感度高い国家」が存在するのだと思います。

身の回りの環境整備
ヨ-ロッパの著名な地方都市、例えば環境都市として知られている南ドイツのフライブルグの街を歩き、あえて裏通りを歩いてみると分かります。どこにもゴミがありません。
温泉で有名なバ-デン・バ-デンのホテル、その裏口辺りをチェックしてみてもゴミは見かけません。ところが、日本の著名温泉地の調理場の出口辺り、そこには前夜お客に高額で提供したビ-ルやお酒の空き瓶が放置されている、それが一般的に多いのです。
フライブルグもバ-デン・バ-デンも、世界中から観光客を多く迎えている都市です。それらの都市の常識はゴミ処理の巧みさです。人には見せない場所で管理し整備し処理しているのです。これが世界から優良観光客を集めるための最低前提条件です。

国家ビジョンに一人ひとりが参加する
先進国一位の財政赤字の改善、主要国第一位の自殺率の改善、欧米一流基準から劣る都市美観感覚の改善、この三項目が「好感度第一位国家」ビジョン達成への最低必達条件であり、これが2030年に世界中から観光客を4000万人迎える前提要件と思います。
またこの最低必達条件をクリアするのは国民一人ひとりの意識改善が前提条件です。以上。
(次回3月5日は海外出張のため休刊となります)

投稿者 Master : 2005年02月21日 10:40

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