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2007年01月06日

2007年1月5日 考えることのシステム化

環境×文化×経済 山本紀久雄
2007年1月5日 考えることのシステム化

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

今年の経済と日本の最重要課題

今年の日本経済は景気拡大を続ける、という予測が経済調査機関の大勢見解です。一部に今年前半足踏み状態の「踊り場」に差し掛かるとの懸念見解もありますが、これも短期間で終わり、年間では順調に推移し、日経平均株価も年後半にかけて上昇基調に向うというのが大勢です。このような景気拡大は世界的な傾向で、アメリカは10年間、イギリスは15年目、オーストラリアは16年目に入る景気拡大を続け、日本も35年前の「いざなぎ景気」期間を超えました。

だが「景気はよくなっているらしいが、さっぱり実感がない」という声が巷には強いのも実態です。これは過去とのデータ比較でハッキリしています。いざなぎ景気(65.10~70.7)とバブル景気(86.11~91.2)と今回(02.1~)を比較してみますと、消費は9.7%⇒4.5%⇒1.7%増であり、賃金は17.6%⇒4.8%⇒0.3%増に見られるように、いざなぎ景気の時は「消費も増え、賃金も増えた」のですが、今回の景気では設備投資と外需が主なる牽引車なのです。つまり、企業の業績向上で全体の経済状況を好転させたのです。
この結果、国の税収が増え赤字国債の発行も少なくなってきました。日本はプライマリーバランスを単年度で黒字化することが当面の目標で、これは税収増で目標年の11年より早まりそうですが、このような目標を掲げているのは日本くらいで、プライマリーバランスが黒字なっても、バブル崩壊後に財政支出した膨大な借金が減るわけではありません。
個人でも借金漬けが続く生活では、明日に向って意欲的な計画は難しいのは国も同じで、日本国家の大借金漬けは最重要課題です。早く本格的に財政再建をすることが国家運営上最も必要なのです。ですから、まだまだ企業に頑張ってもらい、税収を増やしてもらわねばならないのが実態です。

的を絞る

日本企業の強みは製造力です。日本人が持つ「ていねいにモノをつくりあげ、少しでもよくしようとする意識」を製造現場の仕組みに活かしたトヨタを始め、多くの優良企業が世界に評価されているのはこの日本人の感性です。
トヨタのように毎年アメリカに工場を造ってきたのは、貿易摩擦対策もありますが、アメリカ人がトヨタ車を高く評価し購入するからです。キヤノンも同じで、優秀な製品づくりがアメリカ人に受け入れられ、今日の世界的企業になった要因です。
更に今後、日本の人口が減少していくことを考えれば、日本国内では販売数量は増加しないのですから、購買してくれる人が多い国に進出しなければなりません。自動車の場合、日本国内で販売できるのは軽乗用車を入れても昨年574万台で、ピークの90年(777万台)の74%、これからも増えないのですから海外に展開するしかなく、それをトヨタは実行してきたわけで、結果は納税額日本一という実績になっているのです。
素直に考えると、日本の最重要課題である財政再建を早めるには、トヨタのような世界的企業へ多くの企業が成長・躍進し、好業績をあげ、国に税収という貢献をしてもらうことが最大の対策になります。
つまり、多くの要因がかみ合って複雑になっている財政再建策を、一つの的に絞って対策を整理してみれば、それは企業の成長であり、その企業成長とは人口が増加している海外での展開にかかっているのです。これは歳出削減や個人所得格差等の問題を考慮しない、ある意味での暴論ですが、今回の景気拡大の中身を検討し、財政再建という国家問題を考えれば、様々な対策を考えることも重要ではあるかもしれませんが、的を絞った対策に特化すべきではないかと思っています。

ある世界観を持って世界を見る

今年の世界経済の伸び率予測は、経済調査機関の見込みで4%を超す成長となっています。日本、アメリカ、ユーロ圏は2%前後と予測していますが、中国をはじめとした新興国の景気拡大が大きく世界全体に貢献するので4%を超すと見ているのです。
ここでまた素直に考えてみたいと思います。例えば、自動車はアメリカ、ユーロ圏、日本では多くの家庭で所有していて、何ら珍しい存在ではありません。だが、その他の国では車は一般的に非所有物であり、貴重品であると思います。つまり、車を持つことに憧れている人たちの方が世界全体では多いのです。カメラも同じです。日本人にとってカメラは持っているのが当たり前ですが、地球の上から世界を見れば、カメラを持っていない人の方が多いと思います。世界的に見れば需要は限りなく存在するのです。
その需要があって、経済的に購入できなかった国の人々が、経済力を持ち始めた。これが世界経済を成長・躍進させる最大要因となったのです。構図が変わって来たのです。
BRICsのブラジル、ロシア、インド、中国。NEXT11ネクスト・イレブンのバングラデシュ、エジプト、インドネシア、イラン、韓国、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、トルコ、ベトナム。TIPsのタイ、インドネシア、フィリピン。
東西冷戦の終結を受けて、1990年代に始まった経済のグローバル化は、このような国の経済成長を促進し始め、地球の隅々まで経済成長という姿がいきわたっていくというのが、経済専門調査機関が予測する世界経済の伸び率4%を超す背景なのです。
ですから、経済力を持ち始めた国々対してアプローチしていくことによって、まだまだ企業は成長できる可能性が高いのです。つまり、世界経済全体が大きく成長し、日本製品に対する需要がますます増えるという世界観で、地球全体を見る必要があると思います。

人の力量とは考えること

毎月、内外各地を訪れ、多くの方とお話し、事業の成功例や失敗例を学んでいます。実例としてお話いただく内容は結果論です。この結果論はある条件で成功した事例であって、それをそのまま真似して展開したとしても、必ず成功するとは限りません。逆に失敗した事例でも、成功する場合があります。倒産寸前企業の再建を成功させた者としてよく分かります。
事業が成功するか失敗するかは、その背景にある「経営を担当した人の発想や工夫」によるのです。戦略決定と戦術展開の巧拙、つまり、事業担当する人の力量の問題に帰結します。トヨタもキヤノンも創業者から現在まで経営者の力量が優れていたからこそ、世界的企業に成長し、国家に多額の納税を行う貢献企業に成れたのです。企業は人なりです。
ですから、企業成長には人材が必要なのです。経営環境も重要な必要条件ですが、それよりも人の力量です。
では、どのような力量が必要なのか。様々な人間力要素があると思いますが、最も大事なことは「考える」ということではないでしょうか。この「考える」ことは誰でも行っていることで、人間ならば必ず行うことです。
しかし、「考える」という内容をシステム的に行っているか、ということについては如何でしょうか。「考える」ことを脳内行動のシステムにしているかどうかということです。
「考える」とは次の五つの作業ステップを踏むことだと、私の専門である脳力開発では定義します。①集める⇒②分ける⇒③比べる⇒④組み合わせる⇒⑤選ぶ、この五段階のステップを意識的に踏んで、日常行動の中にシステムとして習慣化させていく。
「①集める」とは情報を収集することであり、「②分ける」とは要件ごとファイル化することであり、「③比べる」とは戦略に基づいて集め分けたものを対比することですが、特に大事なのは「④組み合わせる」です。新しい発想・着眼・創造は組み合わせから生れ、他との違いをつける最大ポイントです。最後の「⑤選ぶ」は決定することです。
この一連の作業を常に行って、日常の中に習慣化させ、システム化して行く結果が、諸問題への対処方法を決め、行動となって、その実行結果として、成功・失敗が決まるのです。

考えることのシステム化

今年の日本経済は順調に推移するという予測と、世界経済も高い伸びを示すという予測、この両者の組み合わせによって、日本の企業力を更に強化し、税収を高めることによって、日本の最重要課題である財政状態が、早く正常状態に戻ることを期待したいと思います。
そのためには日本の企業力向上が絶対条件であり、企業経営者の「考える力」システム化が前提条件ですが、この脳力開発思考ステップは全ての人に有効であると思います。以上。
(1月20日号は海外出張のため休刊となります)

投稿者 Master : 2007年01月06日 09:09

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