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2006年01月06日

2006年1月5日 見える化

環境×文化×経済 山本紀久雄
2006年1月5日 見える化

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

NYタイムス記事の反応
前回レターでご紹介した、昨年12月21日のNYタイムス記事「アジア人ライバル達の醜いイメージが、日本でベストセラーに」に関して、いくつかご意見をいただきました。 皆さん、それぞれご見解をお持ちで、なるほどと思います。

ところで、元旦の日経新聞第一面で、今年20歳になる大学生千人に「あなたの嫌いな国はどこですか?」と聞いた結果は、1位中国43.7%、2位韓国28.7%と掲載されました。継続的データがないので確定的には言えませんが、この両国に対する感情は、最近では最も高いものではないでしようか。ある意味のナショナリズムが台頭していると思います。その要因はいろいろあり、それらの要因に頷けるのですが、あるひとつの立場に頑固にならないようにしたいと思います。
常に自己を相対化し、客観視し、時折自分を見つめなおすという作業が必要であると思います。一気に過熱する、というのは危険だと思います。

2006年の景気
日本はバブル崩壊という傷口をようやく治療し、再び日本経済は反転を示すタイミングに来た、と主張するのが三菱UFJリサーチ&コンサルティング投資調査部長の嶋中雄二氏です。嶋中氏から「日本経済の現状と今後」について、昨年12月詳しくにお聞きしましたが、そこで述べられたことが元旦の日経新聞にも掲載されました。
「2006年はゴールデン・サイクルに突入する。景気循環を示す短期の在庫循環(3―4年)、中期の設備投資循環(10年前後)、長期の建設投資循環(20年)、そしてコンドラチェフの長期波動(60年)、この波長の異なる四つの循環がすべて上昇に転じる」まさに、日本は「好況の時代」を迎えるという分析内容で、嶋中氏から頂いた諸データからは、このような動向がうかがわれます。しかし、ここで気をつけなければならないことは、すべての部門、すべての人々がこの「好況の時代」を謳歌することにはならないという事実です。日本の産業構造がかつてとは異なっている事実です。
国際収支の現実を見ればそのことがよく分かります。2005年度上期の貿易収支額
4.9兆円より、海外からの利子・配当の受け取り超過額を示す所得収支5.7兆円の方が上回っているのです。この実態が示す意味は、今や日本は他国では作れない高品質の製品輸出で稼ぐ一方、投資や金融で稼ぐ投資立国への道を歩み始めているということです。
 貧乏敗戦国として再スタートした日本が、還暦を越える66年を経て、産業構造改革を行って、新しい意味での豊かな国に変わろうとしているのが今なのです。
ですから、今までの思い込み・思考を変えねばならないタイミングに、すべての人が立っていると思います。何故なら、「好況の時代」を謳歌するのは、その「好況の時代」に相応しく合致する知識体制・行動システムを、創りあげることができるところであり、それを実現できた人のみが、より高いリターンを獲得してしまうからです。
言葉を換えて言えば、「格差のある好況の時代」が到来しているのです。

人口減社会
元旦の新聞は一斉に日本の人口減を取り上げています。昨年が近代に入って初めての人口減を示した年であり、予想より早く来たことのショックから、いろいろな対策案が提案されています。しかし、諸対策を直に進めたとしても、出生率が格段に低いわけですから、それが上昇しないと人口は増加しません。竹中総務大臣がテレビ討論会で「人口減社会への突入は30年前から分かっていたが、30年間有効な手段を準備しなかった」と述べている通り、何年もいたずらな出生率予測の誤差を行ってきたことも含め、対策が後手に回って、今になって問題視しているのです。
まず、この人口減対策は簡単には解決つかない、という視点が大事です。また、対策は超長期戦になりますので、その間、別の短期対策視点が必要です。
短期に、直にできることは、今生きている我々ができることです。つまり、我々が変化することが必要なのです。では、どの方向に変化するのか。それは「生産性を上げる」ことしかありません。このようにお伝えすると、今でも忙しいのに、更にスピードアップするのか、という疑問が持たれると思いますが、そのような内容ではありません。
人口減対策として、国全体の産業構造の見直しとか、規制緩和とか、非効率な公共部門の民営化とか、海外からの優良な人々とマネーの呼び込みとか、それらの政策的なことは、政府が音頭をとって行っていき、長期的にその方向に動いていくと思います。ですから、我々一人一人が人口減対策として行うことは別のところにあります。
それは、一人一人の持てる力を、一人一人が自らの変化で、最大限に発揮させることです。人は皆すばらしい財産を持っているのです。ただ、それを発揮していない人が多すぎるのです。発揮しないようなシステム環境下に、自分で自分を置いているのです。
そこから一人一人が脱皮すること、そのために考え方を変化させること、それが人口減対策の本筋であると思います。

愛知万博の成功
昨年の最大のイベント成功は愛知万博であると思います。開幕前と開幕直後は心配されました。だが、時間が経過するにつれ集客があがってきて、結果的には2205万人、目標1500万人に対し147%もの人が入場しました。
万博には大変関心があり、日々入場者数を記録していましたので、よく分かるのですが開幕直後は1日6万人と不調で、5月から1日10万人になり、8月は13万人、とうとう9月は1日20万人と、当初の6万人に対し三倍になりました。
このように好調となった要因について、閉幕となった9月25日以降、ずっと考えていましたが、ハッキリした結論は得られませんでした。
ところが、先日、愛知県館の総合プロデューサーの山根一眞氏の発言を聞いて、ひとつ理解が進んだことがあります。一言で言えば「時代の思考が変わった」ということです。
山根氏は「今までのモノづくりは、資源もエネルギーも永遠にあるという前提でやってきた。その意味で、あらゆるモノづくりは、産業革命から全然変わっていない。電気も発電所でつくっている。それを愛知万博の政府館とNEDOパピリオンでは、会場内のゴミから発電して賄ったのであり、それは『環境革命』の実践であった」と述べたのです。
すべての基本になる動力源の電気を、自らの会場内から創出するシステムにしたのです。この万博会場内で使用する電気を、会場内で産出したということ、つまり、自らが持つ中味から基本的な動力源を作り出したということは、人に例えれば、一人一人の持てる力を最大限に発揮させることで、自らの新しい能力を生み出すことであると考えられるのです。
このことを未来の地球環境を心配する、多くの日本人に直感的に理解されたのではないでしょうか。今の環境問題の本質は自分たちにあると分かったのではないでしょうか。
それが愛知万博の成功に結びついた、真の要因ではないかと思っているところです。

自分の中に何があるかの旅をする
正月二日は近所の四家族が集まって宴会をしました。一年に数回集まって宴会します。
今回のホスト役は、昨年春、霞ヶ関のある官庁を定年退職した高級官僚だった人物です。
キャリアの上級職は、一般的に定年前に天下りするのが通例で、それが社会で問題なっているのですが、このホスト役人物は天下りを拒否し、定年を迎えたのです。四家族とも、それぞれ異なった職業経験であり、まだ定年前の人もいまして、話題が豊富で、様々な会話が交わされ楽しい一時でした。時間も過ぎてそろそろ終わりかけた時、ホスト役から質問を受けました。「山本さん。定年後の生き方について教えてください」。
先輩のこちらに尋ねてきたのです。そこで、日頃皆さんにお話していることですがと言いまして「自分の中に何があるかの旅をすることではないでしょうか」と答えました。
これに対するホスト役は「うーん。なるほど。そうか・・・」と暫く腕組して宙を見上げ「分かりました」の発言。とても嬉しい正月二日でした。

見える化
トヨタの成功にはトヨタ式経営があり、そのひとつの「見える化」は、問題発生を隠さずに見えるようにする改善運動です。これは人にも例えられます。自分の中に何があるかの旅をして「見える化」すること、それが人生という仕事ではないでしょうか。 以上。

投稿者 Master : 2006年01月06日 13:05

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