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2005年09月22日

One To One

    YAMAMOTO・レター 環境×文化×経済 山本紀久雄
      2005年9月20日 One To One

選挙が終わって

衆議院総選挙が終わりました。小泉首相の大勝利でした。ほとんどの人の予想を超える記録的大勝利です。
前回のレターでご案内した藤原直哉氏の「自民党大敗」という予測、藤原氏は事前に発表された新聞の予測内容が自民党有利と報道したことに対し「大新聞はアメリカにいわれ情報操作している」とまでいいきっていました。そこまで断言するには相当の根拠があったものと推察し、結果がはっきり現れた現在、本人の見解を聞きたいところです。
まだ藤原直哉氏から次のワールドレポートが届かないので、どういう論理構成で自民党大勝利を分析してくるのか、それを待っているところです。

まだ藤原直哉氏から次のワールドレポートが届かないので、どういう論理構成で自民党大勝利を分析してくるのか、それを待っているところです。
しかし、今回の選挙は投票率が高く、久しぶりに多くの国民が、関心高く迎えた9月11日でした。どうして関心が高かったのか。その要因分析も様々なされていますが、高くした一つの事例を紹介したいと思います。
それは熊本から届きました。熊本の田中貴子さんという大学生が「選挙実行委員会」をつくって、若い世代の選挙に対する関心を高める行動を展開したのです。
今まで20歳代の人は選挙投票率が低く、無関心で、その理由を聞きますと「誰に投票しても政治の結果は変わらないから」というような返事が多く聞かれました。
今回、このような若い人たちに関心を持ってもらい、選挙投票に行動を変化させようと、田中さんらの大学生が自主的に「選挙実行委員会」を立ち上げ、候補者を集め、各会場で討論会を始めたのです。選挙終盤戦には東京からフジテレビが熊本に取材に来て、人気番組の「とくダネ!!」で、この熊本の若い力の結集が紹介されました。素晴らしい若い人たちの行動力です。
小泉首相大勝利の裏に、高投票率という実態があり、それを実現させた背景に熊本に代表される若い世代の活躍があったこと、その事実を知り、その動きは若い世代が未来の日本の方向性を考えはじめた変化の一環であると思います。素晴らしいことです。

足立美術館

足立美術館は有名になりました。昔は東京都足立区にある美術館ではないかと誤解するほど知名度はありませんでした。しかし、今は「足立美術館」と聞いただけで「ああ、あの有名な横山大観の絵で」とうなづく人がほとんどです。
その上、ここ三年間、日本庭園ランキングで第一位ということで、さらに有名になりました。ランキング審査はアメリカの日本庭園専門誌が行ったもので、日米豪の専門家が全国693ヵ所の寺社、美術館、旅館などから選考しています。単に庭の内容だけでなく、庭の管理状況、建物との調和、接客サービスなどを総合的に評価したものです。二位は京都の桂離宮で、ここを抑えての第一位というのですから立派です。
前から一度行ってみたかったのですが、ようやく先日訪問することができました。JR西日本の島根県安来駅からシャトルバスが無料で送り迎えしてくれますし、安来駅で足立美術館の入場券を購入すれば手荷物を無料で預かってくれます。安来駅前は何もないのですが、食べ物なら何でもありという食堂とコンビニがあるだけの田舎駅ですが、駅前片隅のシャトルバス停には、発車時間間近となるとどこからか大勢集まってきます。

その安来駅近くのコンビニに入って、ふとレジ前のPOPを見てびっくりしました。どこかで見た顔写真がカウンターを飾っています。渋い外国人の上半身です。それは調理人の姿、パリのギ・サヴォア、三ツ星レストランのオーナーシェフです。何回か取材で会い、ギ・サヴォアレストランはバカ高いので一回しか食事をしたことはありませんが、その一回食事したときに、挨拶に出てきて、スープをサービスしてくれたことを憶えています。そのパリで最も有名なギ・サヴォアの笑顔写真が「ボジォレー ヌーヴォーご予約承り中」と書いてあるPOPの中にあります。ギ・サヴォアがコンビニチェーンと提携したのです。三ツ星レストランのオーナーシェフ、それもギ・サヴォアですから、コンビニとの提携には何かの理由があるのでしょうが、「フランスを救った日本の牡蠣」に登場してもらった人物と、足立美術館に行く前に安来駅前で会えるとは意外でした。今度、ギ・サヴォアに理由を聞いてみたいと思いますが、驚きました。

 さて、足立美術館は噂どおりの立派さでした。しかし、その概要をお伝えすることはやめたいと思います。十分なる解説ができないと思いますので・・・。
 しかしながら、足立美術館を今日の評価にしたのは、オーナーであった足立全康氏の情熱です。貧しい家から身を起こし、71歳のときに美術館を開館したのです。幼少期は引っ込み思案で、学校の成績も丙と乙だらけ。尋常小学校を卒業した12歳から働き始め、農業の傍ら木炭の販売、鉱山経営で失敗、兵役後大阪に出て仕出屋、たどん屋、再び郷里に帰って米の仲買い、荒物屋、繊維ブローカー、刀剣製造会社、戦後は大阪で綿布問屋、外車販売、金融業、不動産業など、とにかく生涯で30を超える事業を興し、数々の成功と失敗を繰り返しました。
 大儲けしたのは不動産会社です。戦後の混乱期に戦災焼け跡バラック建ての心斎橋骨董店、その店先にあった横山大観の絵、それに「胸がすうっとするような荘厳な気持ちにされ」、それ以来、大観に惚れ込み儲けたお金で買い集めだしました。集めてみると蔵に納めておくだけではもったいないと、郷里の自宅があった辺りの場所に昭和43年(1968)に美術館を設立し、それから37年、今や島根県安来市の道路端畑の真ん中に、突如として立地する足立美術館、美術館としては立地がよくない場所に、国内外から集まって、今や国内トップクラスの入館者数を誇るまでになったのです。
足立全康氏の成功は、横山大観という時代が変わっても、多くの人に価値が認められる絵画、それ一筋に情熱を傾けたところに、今日の成功があると思います。

TABOO 

今は変化のときです。衆議院選挙も郵政民営化という変化を求めた自民党が勝ちました。対する民主党は、変化は必要であると意識しながらも、変化ということに対して曖昧さを残したスローガンでしたので、大敗したと思います。
 知に完成形がないように、時代にも完成形がなく、過去を創り変え再生していかないと、制度も組織も腐っていきます。ですから、その時代に合致したシステムを創り、それが創り終えたら、更に次の時代へのシステム創りをする。そのような弾力的思考を持たないと、今の時代を乗り越えて行くのは苦しいと思います。
 変化は英語でCHANGEです。この中からGをとってCにするとCHANCEですから、変化はチャンスであるといえ、このような比喩がよく巷間いわれています。変化に対して常に前向きに取り組んでいけば、必ずチャンスが訪れるともいわれています。
 その通りと思いますが、そのようにチャンスにするためには一つ大事な条件があります。それはGとCの違いを知ることです。GとCとでは何が違うか。Gをみれば分かりますように、GとはCに小文字のTを加えたものです。ジャイアンツからタイガースのTをとるとCになって、そのCで書き直すとCHANCEチャンスとなるのです。つまり、Tという意味を変化から取り去るとチャンスになります。
 ではTとは何でしょう。それはTABOO・タブーです。意味は禁止された、禁制という意味ですが、人は必ずこのTABOOを持っています。固定観念や既成概念とも思い込みともいいますが、すべての人は自分の考えとしてTABOOを持っています。
 だが、時代は自分に関係なくドンドン変化していき、それに背を向けていると時代に取り残されていきます。ということはTABOOという意味も変わっていきます。TABOOとして変えてはならないと思う自分の気持ち、その固定観念、既成観念、思い込み、それらを時代感覚でチェックする必要が出てきたと思います。

One To One

日本の姿を創るのに、大きな役目を果してきた郵便局のお金、その運用を時代と共に変化させていく。その必要性を小泉首相が選挙の争点にしたことは、我々にTABOOを見直すことを教えてくれ、加えて、マーケティングの大事さも教えてくれました。
代議士が反対し流された改正案、それを国民に尋ねなおしてみようという今回の選挙、それはOne To Oneマーケティング手法です。一人ひとりに聞いてみて、それから総論を構築していく。正に店頭で一人ひとりに個対応し、その結果で全体売上を獲得していく。そのマーケティングセオリーを採り入れたのです。政治的にはいろいろな見解はあるでしょうが、一人ひとりに対応したマーケティングの勝利と思います。以上。 

投稿者 Master : 2005年09月22日 10:49

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