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2005年02月09日

好感度第一位国家とは

YAMAMOTO・レタ-
環境×文化×経済 山本紀久雄
2005年2月5日 好感度第一位国家とは

2030年の国家ビジョン
政府の経済財政諮問会議が今春まとめる「日本21世紀ビジョン」の中間報告案が明らかになりました。25年後の2030年、日本が目指すべき三つの将来像です。
●「好感度第一位国家」=世界中の人々が「訪れたい、働きたい、住みたい」と思う国
●「健康寿命80歳社会」=高齢期も生涯現役で自立・充実した生活を過ごせる社会
●「等身大公共革命」=小さく効率的な政府を実現。民間が広範囲で公共サ-ビスを担う

この中で筆頭に上げられたのが「好感度第一位国家」で、内容は世界のアニメ産業の拠点や、製造業の各業種で最低一社が上位十社に入る、という目標を明示し、訪日外国人旅行者を4000万人に拡大するというものです。

国家ビジョン策定の裏背景
昨年10月に実施した内閣府による国民へのアンケ-トで、最も多かったのは「2030年の生活が悪くなる」という回答でした。その具体的イメ-ジは次の四つです。
● 人口減で経済が停滞し悪循環に陥る
● 財政再建が進まず、国債価格が急落し増税が民間の足かせとなる
● 東アジア経済統合が中国中心に進み、グロ-バル化に乗り遅れる
● 経済格差が拡大し、将来に希望を持てない層が滞留する希望格差社会が到来する
これらの暗く悪いイメ-ジを持っている人が63%もいる、それが今回の国家ビジョン策定の背景にあります。この表面に現れた悪いイメ-ジ、それを反対の姿に変化させるという基本戦略が「2030年国家三つのビジョン」であり、これら国家ビジョンの実現を通じ、生産性を大幅に引き上げ、人口減少下でも国力低下を回避させ、未来を明るい希望の持てる社会にしていこうとするものです。

好感度第一位国家とは
てはビジョンの中でトップに挙げられた「好感度第一位国家」とは、具体的にどのような姿を意味するのでしょうか。それは世界中の人が憧れる魅力ある国家になって、現在の訪日外国人600万人を、約七倍の4000万人にするということです。ですから、魅力は今の七倍になっていなければなりません。
政府の観光立国推進戦略会議(座長 ウシオ電機会長)が、先般55の具体的な提言を行いました。提言の一つひとつすべて重要なものであり、該当する観光関係者が率先して実行して貰いたいものばかりですが、我々一般住民としても参画すべきものがあります。
それは自分が住んでいる「地域」「場所」の魅力とは何かを考えることであり、その魅力を高め、もてなしの心を持って来訪者に接し、自分が観光する際には、休暇時期を分散させて、快適な旅を最大限楽しむなどの「観光するこころ」を育てることが必要、という提言に成る程と思います。まず、自分が住む「地域」「場所」が魅力的になること、その実現があって、はじめて他地域・世界の人々が訪れると言っているのです。

ダイエ-の基本戦略の選択
ダイエ-が産業再生機構に入り今後の再建方向性が検討されています。ダイエ-が現状の姿になったこと、それに対する見解が多く語られています。その一つひとつが参考になりますが、結局「消費者からの支持」が多く得られなくなって、消費者がダイエ-に買い物に行く回数が少なくなったこと、つまり、お客から「他社に比較して好感度が低い店舗場所」と評価されたことが不振の要因なのです。
この不振要因背景には、ダイエ-が採った基本戦略の誤りがあった、と指摘するのはダイエ-創業者中内功氏の弟による自伝、中内力著「選択」(神戸新聞社)です。
その指摘内容は「ダイエ-創業期において意見対立があった。その対立とは小売業に人材と資金を集中するか、それとも卸・メ-カ-を傘下に収め、さらに周辺事業も取り込むか。この基本戦略の違いだった」と振り返っています。前者が著者、後者が功氏だったのです。基本戦略の方向性が妥当で的確であると、未来は時間軸と共に明るい姿に変化していくが、反対の場合は暗く厳しい現実となっていく。これが戦略選択決定の怖さであり、反面、魅力なのです。表を採るか、裏を採るか。その意思決定が未来を決めるのです。

子どもへの思いを伝えているか
閉塞間が漂う育児環境、陰湿化するいじめ、引きこもり・・・。子育ての場で問題が山積しています。育児における父親の存在が問われている時代です。
すでに子育てを終えた環境下ではありますが、重要な社会問題ですから関心を持っています。先日、家族の「今」を見つめ続けている、作家の重松清さんからお伺い機会がありました。また、2月1日のNHKラジオで「ガンバレ!主夫」という長時間番組を聞きましたが、ここで家事・育児をしている父親の奮闘振りに驚きました。
この主夫という新しい言葉とその背景には、家族のあり方が変化する中で、父親はどんな役割を見出せばよいのか、というテ-マの追求があったのです。重松さんも、NHKで語った二人の主夫も同じことをいいました。「結局、問われているのは自分の人生観だ。俺はこういう父親なのだという存在を自分の主語で語ることだ」といいました。これには感動しました。家族崩壊とか、子育て環境が悪すぎるという一般的な意見が多い中で、そのような一般論では自らの家庭は何ら問題を解決できない。そんなことはどうでもよいのだ。自分の家族の問題なのだから、自分の流儀で進めていく。そのためには重要な判断基準がある。それは何か。その何かについて重松さんは「日本中のすべての家族に共通する幸せはもはやない。だが、わが家にとっての幸せを見出すことはできる。わが家にとっての輝きは何か。それを探し、子に伝えるのが父親の役目だ」と語り「皆はこうだ、社会はこうだ、マスコミはこうだというのはずるいし、怠けていると思う」とも加えたのです。

ヨ-ロッパ人の都市再生思想
都市再生としての開発が盛んです。六本木ヒルズや汐留・東京駅周辺、都心に超高層のハイテクビルが建設されています。
日本社会はこのところ階級差がついてきたという見解もありますが、世界中からみればまだまだ格差の少ない社会です。ところが、ビルの形態だけをみると、大金をかけた超高層ビルと、庶民の雑居とが混在している景観となっていて、その格差は都心で目立ち、老朽化した空きビルは見捨てられつつあるのが実態です。
ヨ-ロッパの優れた地域環境都市、例えば南ドイツのフライブルグが典型ですが、それらに行って感じるのは高層ビルが少ないことです。街並の上に飛び出しているのは、教会のド-ムであって、民間のオフィスやマンションビルではありません。特別な理由がない限り、新築は中心市街地では禁止されているところが多いのです。伝統的文化を壊したくないから、規制が非常に多いのです。個人的には迷惑すぎると思う規制でも、町全体が守れば街並としての全体統一感が保たれるのです。
経済と機能を追及したのが日本の街並で、個人主義のヨ-ロッパ人の方が、実は全体主義で自由を規制していることが建物から分かります。これらの背景に「中心市街地は昔のままにしたい」という思想があり、そのために厳しい規制と保護を設けています。つまり、地域の建物を残して、さほど巨大化せずに中身を変える工夫して、人が集まる建物をつくる。これを「本当の価値ある都市再生」と考えているのです。ですから当然この思想で、外国の都市を評価し判断していくことになります。

好感度を高めるのは自分
ヨ-ロッパに世界中から多くの人が訪れる最大の理由の一つは、市街地の見事な整備状況にあります。落ち着いた美しい街並が魅力となって、観光客の目を楽しませるのです。
この事例から考えれば、2030年に4000万人の訪日観光客を迎えるためには、自らが住む地域への基本的な戦略的思想の変換が必要です。
ダイエ-の失敗は、人の支持を得られる戦略から離脱したところにあったという見解、家庭内問題の主因は、父親の輝き不足にあるという重松氏の主張、同じことは地域の好感度を高める役割を担う我々にも当てはまります。自分が住む家の内外の整備なくして、地域の整備はありえないく、それを行うのは自分という一人、その一人がそれぞれ担うことなのです。「本当に価値ある都市再生」へ向かうためには、まず、自ら住む地域に自分が何をし、何ができるか、という思想への変換が最も必要です。このテ-マ次回続く。以上。

投稿者 Master : 2005年02月09日 10:46

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