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2005年01月21日

非適応文化を修正する

YAMAMOTO・レタ−
環境×文化×経済 山本紀久雄
2005年1月20日 非適応文化を修正する

(景気は踊り場)
日本の景気は踊り場にいる。これが1月7日の日経新聞社主催、新春景気討論会での結論でした。これから先の見通しについてはパネラ−の立場でそれぞれ見解が分かれます。年内に上昇する、夏ごろになる、否横ばいだ、と意見は異なりますが、マイナスにはならないだろうというのが統一見解でした。

パネラ−の一人、ヨ−カ堂鈴木会長は低成長を予測しましたが、その根拠は「人の気持」です。人々の気持を明るくしないと消費は増えない、と強調します。人の気持が揺れ動いていることは、今年の正月三が日神社仏閣への初詣の人数が示しています。1974年から統計が記録されて以来最も多い8966万人が全国の神社仏閣に出かけました。これには新潟中越地震、インドネシア・スマトラ沖地震等が影響していることは間違いありませんが、多くの人が今の時代に不安感を持っているのです。

(おけさ踊り)
日経新春景気討論会を終えて東京駅北口に入りますと、広くて高いホ−ルに何かが輪になって動いています。何だろう、と思って近くに寄ろうとしたときに「にいがたキャンペ−ンです」と、薄い透明ビニ−ル袋を手渡されました。中にはポケットティッシュが一つ、それとパンフレットが数枚入っています。
成る程、中越地震で被害を受けたので元気を出そうとキャンペ−ンをしていて、そのために佐渡のおけさ踊りを披露しているのか、と思いましたが、それにしてはラジカセの音が低くて聞こえず、踊っている人が寒々しく見え迫力がありません。北口ホ−ルは高くて広いので通常のラジカセ程度では音響効果が出ないのです。

(クロ−ズアップ現代)
その日のNHK7時ニュ−ス後は、クロ−ズアップ現代が続きます。テ−マは何と「にいがたがんばれ」でした。東京駅で見たおけさ踊りと連動しているのか、とテレビを見ながら手許のビニ−ル袋に入っているパンフレットを取り出すと、それは新潟観光誘致内容が網羅されています。JRの割引運賃、温泉も大歓待でお待ちしますとの表現です。
クロ−ズアップ現代に温泉の支配人が登場しました。「宿泊客が激減して何千万円の売上源です。対策としてお客さんに手紙を書いて、その中に餅を一個入れて送っています。この旅館を思い出して欲しいという気持からです。先日一人の男性が来てくれました。嬉しかったです。しかし、もっともっと来てくれることを祈っています」と語ります。
大変だなあと思います。地震で危険なので人は行かないのです。地震の影響から当たり前ですが、結果は地元の経済に大打撃を与え、それを回復したいと新潟県はキャンペ−ンを展開したのです。気持はとてもよく分かります。同情します。

(人が観光地に行く意味)
景気は踊り場だというように表現する「景気」という言葉、それは「景色」の景と「気持」の気から構成されています。
景色はどこでもあります。日本中、山あり川あり海ありですから、全て景色だらけです。だが、その景色の中でも人が多く訪ねる特別なところがあります。昔から「名所」といわれるところです。多くの景色の中から人々が自然に選んできた場所が名所となって、今でも多くの人を引き寄せているのです。
その特定の名所が人を引き寄せる要因は何でしょうか。それぞれ名所の特長によって要因内容は分かれますが、共通していることは「その場に人をひきつける何かがある」ということです。普通の景色とは異なる何かを感じさせ「人に行きたい気持にさせる」ものがあるのです。それはその場に固有の「気」が存在するからです。その場に立つと「いいなあ、気持いいなあ」を感じさせるもの、その「気」を持っているのが名所になるのです。ですから、古来昔から「景色に気がある」名所に多くの人々が訪ねるのです。
また、その場の気の強弱によって、集客人数の強弱が決まります。それがそれぞれの神社仏閣への初詣人数にも、一人一人の人間力にもあらわれます。

(時とタイミング)
新潟中越地震によって被害を受けられた方々は、この正月仮設住宅で過ごされた方が多いと報道されています。自宅が一番よいのは分かっていますので、大変だと本当に同情しお見舞い申し上げる気持で一杯です。自分の立場に置き換えればよく分かりますから。
このような気持になっている人が、日本中の多くの人の現実の気持ではないでしょうか。とすると、正直に申し上げて新潟地区に行って、被災者の方々がおられる場所近くに行ったとしても、通常の観光気分になれないのではと思います。例えどんな名所があって、その場の「気」を感じたいと思っても、日本中が新潟中越地震状況を熟知しているのですら、ちょっと観光気分で訪れることは憚れる、それが多くの人の気持の中にあると思います。
このような気持ちのところに「にいがたキャンペ−ン」が行われたのです。展開する新潟の人の気持はよく分かりますが、果してこのキャンペ−ンの効果が十分発揮出来るでしょうか。疑問です。時とタイミングで非適応と思います。新潟にお見舞いに行こう、というキャンペ−ンであるならば別の気持になれますが、観光には申しわけなくて行けない、というのが正直な気持でしょう。気持がそうならないのです。では、経済的打撃はどうするのか、と反論されるかもしれませんが、それは別途の対策で講じるしかないと思います。

(時代は反対に向かう)
今年は戦後60年になります。その間一貫して日本の政治は自民党一党が支配してきました。途中で細川・羽田内閣がありましたが、その他は連立政権としてもずっと自民党が政権を担ってきたのです。
先日、田原総一郎氏が次のように言っていました。「戦後政治は三本の柱で成り立っていた。第一は国際外交で全方位・世界中と仲良くする。第二は国民生活を豊にする。第三は国民生活を便利にする。しかし時代は変わった。第一の国際外交はイラク派兵で米国側についた。第二の国民生活はここ3年給料が下がり、年金支給・医療給付も悪くなり苦しくなった。第三は高速道路・新幹線の延伸・新設に国民多くから疑問が出されているが、これは不便でよいという主張だ」と。
つまり、戦後60年間の方針が逆の方向になったといっているのです。そのとおりと思いますが、そこに更に人口減という事実問題が迫ってきました。
人口が増えつづけるという前提で全てのシステムが出来上がっているのです。しかしその前提条件が反対になるのですから、当然に国家運営システムは今までと反対思考で行っていかねばならないはずです。ところが、今までの体制システムを変えることに抵抗があるのが人間ですから、なかなかうまく改革が進まないのです。

(真面目さが非適応を生む)
自分の体験で分かりますが、多くの勤め人は真面目に一生懸命仕事をします。きちんと決められたこと、それは上司の指示を受けて、それに対応すべく努力しつづけています。また、管理職は部下からの報告とトップからの指示を受け、その両者の間で必死に真面目に取り組んでいます。このような共通姿勢の他に、もう一つは「仕事の枠組み以外に興味を持たない」という共通性があり、この感覚で行動しマネジメントしていくのが一番と思っているのが日本の多くの勤め人です。
しかしながら時代は反対方向に向かっているのですから、「仕事の枠組み以外に興味を持たず」、「時代の動き」に関心をはらわずに、ただ一途にきちんと真面目に従来姿勢で仕事しているだけでは、あっと思う間に、真面目に必死に取り組んでいる「その仕事そのもの」が時代に非適応となっていく、という恐れが大きいのです。
つまり、世の中の変化に対応できないという結果を招くのは「あまりにも真面目だから」ということなのです。一生懸命に真面目にすることが「非適応文化」になる時代だ、という事実を知り、ある種の不真面目さ、それを自らに取り込んでほしいと思います。

(どうするか)
時代の踊り場でどの方向に向かうか不安・不明な現在、その今に適応するためには、自らの中にある「非適応文化」ポイントを、探し見つけ修正していく生き方が必要です。 以上。

投稿者 Master : 2005年01月21日 11:21

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