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2011年12月06日

ユーロ危機で分かったこと・・・その一

YAMAMOTO・レター
環境×文化×経済 山本紀久雄
2011年12月5日 ユーロ危機で分かったこと・・・その一

フリクションボールのお土産で恥かく

 11月は仏独に2週間出張しました。ドイツの知人に企業訪問時のお土産に「フリクションボール」をお土産にどうだろうと尋ねたところ、文房具店で販売しているが、日本からわざわざ持参したといえば歓迎されるだろう、という回答だったので東京駅前オアゾ・丸善書店で買い、贈答用に包装してもらい持参しました。

 「フリクションボール」をご存じでしょうか。「消えるボールペン」のことです。昨年、パリで日本の消えるボールペンが話題なっていると聞きましたので、まだ新鮮だろうと考えてお土産にしようと思ったわけです。

 ドイツで訪問した企業の社長にお土産ですと言って差し出すますと、すぐに袋を開けて一言「中学生の娘が3・4年前から使っている」というではありませんか。

 ビックリし、それからいろいろドイツ人に聞いてみると全員が「子供が使っている」という回答です。日本に戻って大人の日本人に聞くと「フリクションボール」なぞは知らない、という方が多く、これはどうしてなのだろうかとパイロット社に問い合わせしてみると「2006年にヨーロッパで日本に先駆けて販売したところ大ヒットした」とのことで、その理由として「ヨーロッパでは義務教育では鉛筆使用が禁止で、万年筆かボールペンを使用させているのでヒットしたのだ」という回答です。
 
改めて仏独の義務教育の実態を調べてみると「しっかり明確に字を書くよう鉛筆使用が禁止」ということが分かりました。

 なるほどと思いましたが、今まで何回もヨーロッパに行き、小学校・中学校にも訪問しているのに、鉛筆使用禁止ということは把握していなかったわけで、随分知らないことが多いと反省しているところです。これはユーロ危機でも同様です。

ユーロ危機で分かったこと

 今回のユーロ危機で分かったことは、
 (1)ギリシャという国は特殊であること
 (2)戦後66年、EUの盟主はドイツになったこと
ではないかと思います。

(1)ギリシャという国は特殊であること 

ギリシャが特殊なことは、既にお伝えしておりますし、新聞紙上で毎日のように問題点が取り上げられていますので、十分ご存じだと思いますが、大事なことをひとつだけ述べれば「今のギリシャ人には古代ギリシャ人の血が一滴も流れていない」というドイツ人学者の見解です。(内山明子著 国立民族学博物館『季刊民族学』123号2008年新春号の『ギリシャ・ヨーロッパとバルカンの架け橋』)

 これが発表された時にはギリシャ国内に衝撃が走りましたが、実際にギリシャ各地を歩いてみた感じでは、古代ギリシャ人の血が入っていない、というのは事実ではないかと実感しています。 

つまり、カール・ヤスパース(独)が言う「人類の枢軸の時代」、紀元前500年頃を中心とする前後300年の幅をもつ時代を「枢軸時代」と称し、人類の歴史に多大な影響をもたらした大いなる賢人がずらりと出現し、中国では孔子と老子が生まれ、中国哲学のあらゆる方向が発生し、墨子や荘子や列子や、そのほか無数の人びとが思索し、インドではウパニシャット(宗教哲学書)が発生し、仏陀が生まれ、懐疑論、唯物論、詭弁術や虚無主義に至るまでのあらゆる哲学的可能性が展開されました。

イランではゾロアスターが善と悪との闘争という挑戦的な世界像を説き、パレスチナでは、エリアから、イザヤおよびエレミアをへて、第二イザヤに至る予言者たちが出現し、ギリシャでは、ホメロスや哲学者たちパルメニデス、ヘラクレイトス、プラトン、更に悲劇詩人たちや、トゥキュディデスおよびアルキメデスが現われたのです。

以上の賢人たちが、地域が異なりながら、どれもが相互に知り合うことなく、ほぼ同時的にこの数世紀間のうちに発生したわけで、この時代を「人類の枢軸の時代」というのですが、この栄光ある古代ギリシャ人と、今のギリシャ人は血でつながっていないということを知り、改めて、今回のユーロ危機発生がギリシャ国家の粉飾決算から始まったことと結び付けると「なるほど」と深く納得したわけです。

「ギリシャ人のまっかなホント」(アレキサンドラ・フィアダ)という1999年に出版されたコミカルな本があり、同書で「これだけは断言できる。EU定数にギリシャ人を巻き込んだシステムは、じきにギリシャ的になる」と、EU加盟国はいずれギリシャに感化されていい加減になっていくと”予言”していました。(2011年7月2日週刊ダイヤモンド 加藤出氏)

また、ユーロ発足時のブラックユーモア「THE PERFECT EUROPEAN SHOULD BE...」直訳すれば「あるべき完璧なヨーロッパ人とは……」となり、「こういう各国の人々が集まっているのだからEUの将来も万々歳だよね」という皮肉を述べていました。
DRIVING LIKE THE FRENCH
      (フランス人のように運転マナーがよく)
HUMOROUS AS A GERMAN
      (ドイツ人のようにユーモラスで)
CONTROLLED AS AN ITALIAN
      (イタリア人のように自制的で)
SOBER AS THE IRISH
      (アイルランド人のように酒嫌いで)
HUMBLE AS A SPANIARD
      (スペイン人のように謙虚で)
ORGANIZED AS A GREEK
      (ギリシャ人のように整理整頓好きで)
 ギリシャに対して、様々な忠告・提言が行われていますが、多分、その内容は実行されないと思います。

 2008年の金融危機を予測していたルービニNY大教授がが「ギリシャのユーロ離脱は時間の問題だろう」と語っていますが(日経新聞2011年11月18日)、これが当たる可能性は大であり、ギリシャは「元々ユーロを導入する資格がない国だ」と日経新聞の「大機小機」(2011年11月25日)でも述べているように、ギリシャは異質な国であり、ギリシャを除くユーロ加盟16カ国は、ギリシャ一国に翻弄され、それが他国に影響波及することは必至ですから、ギリシャ排除をするのではないでしょうか。

(2)戦後66年、EUの盟主はドイツになったこと

 ギリシャ問題から発生したユーロ危機で分かったもう一つの重要なことは、ドイツの強さです。今や各国首脳が毎日のようにドイツ・メルケル首相をベルリンに訪ねています。「メルケル詣で」という現象です。
 どうしてなのか。それは次表で明らかです。
各国財政実態表.JPG

 ヨーロッパ主要国との比較でドイツだけが経常収支が黒字なのです。ドイツ一人勝ちなのです。何故にドイツが経済的勝利を得たのか。
 現在、日本で激しい議論が交わされているTPP(環太平洋戦略的経済提携協定)問題にも通じますので、他国制度の実態状況を把握は大事ですので、次号で分析続けます。以上。

投稿者 Master : 2011年12月06日 06:02

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